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七人の侍の日 由来
いまから⑥⑧年前のきょう、①⑨⑤④年④月②⑥日、黒澤明監督の映画『 七人の侍 』( 東宝製作 )が封切られた。7人の侍(演じたのは志村喬・稲葉義男・加東大介・千秋実・宮口精二・木村功・三船敏郎)が百姓に雇われ、村を襲う野武士たちに戦いを挑むという同作は、ダイナミックなアクションシーンにより日本映画史に金字塔を打ち建てる。
このとき黒澤と小國英雄とともに脚本を手がけた橋本忍によれば、同作の構想はその②年前、①⑨⑤②年①②月にさかのぼる(以下、橋本忍『複眼の映像 私と黒澤明』文春文庫を参照)。橋本は、黒澤から新たな監督作品の脚本をまかされ、それまでに②作に着手したものの、あいついで頓挫していた。
②作目は『 日本剣豪列伝 』というオムニバスだった。黒澤は橋本の書いたその脚本を却下したあとで、ふと『 この剣豪伝に出るような有名人はともかく、金のない兵法者はどうやって武者修行していたのだろうか? 』と疑問を口にする。これを受けて橋本はさっそく東宝文芸部に問い合わせた。後日、文芸部員から調査結果を伝えられたプロデューサーの本木荘二郎が、黒澤邸に赴く。本木の報告によれば、室町末期から戦国の兵法者は、道場や寺院を訪ねれば食事も宿泊もさせてもらえたので、金がなくても全国を自由に動き回れたとのことだった。それでも、行った先に道場も寺もなかったときはどうしたのか? この質問にも本木はあっさり答える。戦国の世は全国的に治安が悪く、山野には盗賊や山賊がたむろしていた。だからどこかの村に入って、一晩寝ずに、夜盗の番さえすれば、百姓が飯を食わせてくれた――ようするに『 百姓が侍を雇う 』も⑦人とその場で決まった。
七人の侍のあらすじって•••
麦の刈入れが終わる頃。とある農村では、野武士たちの襲来を前に恐怖におののいていた。百姓だけで闘っても勝ち目はないが、麦を盗られれば飢え死にしてしまう。そして、百姓たちは野盗から村を守るため侍を雇うことを決断する。やがて、百姓たちは食べるのもままならない浪人たち⑦人を見つけ出し、彼らと共に野武士に対抗すべく立ち上がる。
七人の侍のリメイク版って•••
黒澤明監督の①⑨⑤④年の代表作『 七人の侍 』をハリウッドリメイクした①⑨⑥⓪年の名作ウェスタン『荒野の七人』。これら最高峰の名作たちを原案にリメイクされた、映画『 マグニフィセント・セブン 』公開されましたねっ
アントワーン・フークワ監督が古典映画のストーリーを、現代の視点をもって描いた『マグニフィセント・セブン』。バーソロミュー・ボーグ(ピーター・サーズガード)の支配下で、ローズ・クリークの町の人々は絶望的な日々を送っていたが、エマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)を中心としたギャンブラー ジョシュ(クリス・プラット)、流れ者、ガンの達人など7人のアウトローを、復讐のために雇った。町を守るために立ち上がった彼らは、いつしか自分たちの目的が金だけではなくなっていることに気付く――。
西部劇•宇宙へ•••アニメ等になるリメイク
『 七人の侍 』を西部劇としてリメイクしたのが、名匠ジョン・スタージェス監督の『 荒野の七人 』(60)です。舞台をメキシコの寒村に置き換え、盗賊たちから村を守るべく、⑦人のガンマンが集結。ユル・ブリンナーをはじめ、スティーヴ・マックィーン、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソンなど、後の大スターらの出世作となった作品。エルマー・バーンスタインの爽快な音楽も忘れられません。
本作はこの後も『 続・荒野の七人 』(66)『 新•荒野の七人 馬上の決斗 』(69)『 荒野の七人 真昼の決斗 』(72)とシリーズ化されました。
また現在、この『 荒野の七人 』をリメイクした『 マグニフィセント・セブン 』が完成し、日本でも上映されました。
ジミー・T・ムラカミ監督の『 宇宙の7人 』(80)は邦題に偽りなく、宇宙版『 七人の侍 』。原案のひとりで脚本を手掛けているのは後のアメリカ・インディーズ映画界の雄ジョン・セイルズです。
平和な惑星アキール“Akir”(これは黒澤監督の名前・明“Akira”から採ったものです)を襲う悪のセイドアに立ち向かうべく、7人の勇者が集められますが、面白いのはその中のひとりが『 荒野の七人 』のロバート・ヴォーンであること。『 七人の侍 』と『荒野の七人』の双方をリスペクトしていることが理解できるスタッフィングなのでした。
②⓪⓪④年にはTVアニメ全②⑥話のTVアニメ・シリーズ『 SAMURAI7 』が製作されています。これはファンタジー版『 七人の侍 』ですが、オリジナル版で志村喬が演じた勘兵衛がイケメンオヤジのカンベエとなり、三船敏郎が演じた菊千代は、ここではなんと機械サムライのキクチヨとしてお目見えするなど、アニメならではの改変が試みられています。
弱気を助け強気をくじく『 七人の侍 』
そもそも『 七人の侍 』は、弱者たる農民を悪しき野武士から護るべく集められた侍たちを描いた作品ですが、こうした『 弱きを助け、強きをくじく 』設定は世界各国感じ入るものがあるようで、それもまた『 七人の侍 』が世界中で受け入れられている要因のひとつではあるでしょう。
ジョン・ランディス監督のコメディ『 サボテン・ブラザース 』(86)は『 荒野の七人 』のように盗賊集団に襲われるメキシコの村で用心棒を雇おうということになるのですが、そのスカウトを請け負ったヒロインが、町で西部劇『 スリー・アミーゴス 』を見て、銀幕の中の主人公らが実在すると勘違いしてハリウッドに電報を送ったところ、スリー・アミーゴス役の三人も、これを映画の出演依頼だと勘違いして、村へ赴いてしまうというお話です。
ディーン・パリソット監督の『 ギャラクシー・クエスト 』(98)はその宇宙版ともいえる内容で、かつて『 スター・トレック 』もどきのテレビSFドラマに出演していた俳優たちが、そのドラマを歴史ドキュメンタリーだと勘違いした弱小宇宙人の要請を出演依頼と勘違いし、やがて宇宙へ跳び、悪徳宇宙人と戦う羽目に陥ります。
ディズニー&ピクサーのアニメ映画『 バグズ・ライフ 』(98)は、虫の世界を舞台に、悪しきバッタたちから島を救うべく、用心棒を探しに都会へ出たアリの主人公が、やがてサーカス一座の面々を伴い(もちろん一座の面々は、サーカスの仕事の要請と勘違いしています)、バッタ一味と対峙していくのでした。
黒沢チルドレンのオマージュ作品多数•••
ここでは『 七人の侍 』に限らず、黒澤映画に多大な影響を受けた映画人=黒澤チルドレンに関して記していきたいと思います。
黒澤チルドレンには、黒澤映画の数々をモチーフに『 スター・ウォーズ 』(77)を作りあげたジョージ・ルーカスや、その彼と共に『 影武者 』(80)の国際配給に尽力したフランシス・F・コッポラ、『 生きる 』(52)のハリウッド・リメイクを試みるもいまだ実現していないマーティン・スコセッシなど多数います。
黒澤映画『 夢 』(90)を製作総指揮したスティーヴン・スピルバーグ監督は、新作の撮影に入る前、必ず『 七人の侍 』を見直して、映画青年だったころの素直な気持ちに戻って現場に挑むそうですが、そんな彼の戦争超大作『 プライベート・ライアン 』(98)こそは、スピルバーグ版『 七人の侍 』ともいえる集団アクション映画になり得ていると思います。
苛酷なノルマンディ上陸作戦を経て、若きライアン二等兵を救出する作戦に従じることになる⑧人の個性豊かな兵士たちの描出は、まさに『 七人の侍 』をお手本にした見事なオマージュたりえていました。
リフ族首長の生きざまとセオドア・ルーズベルト大統領へのリスペクトをぶつけさせた戦闘活劇『 風とライオン 』(75)で、『 隠し砦の三悪人 』(58)のあからさまなオマージュをやってのけたジョン・ミリアス監督は、『 地獄の7人 』の脚本を経て、共産軍によるアメリカ侵略に徹底抗戦した⑧人の高校生を描いた近未来戦争アクション映画『 若き勇者たち 』(84)を発表。
そのタカ派的内容は激しい賛否を呼びましたが、実際の中身は8人が仲間割れして内ゲバにまで発展してしまう青春悲劇としての要素も強く、結果として『 七人の侍 』を彷彿させるものにはなり得ていませんが、その一方でラストは雪降る公園のブランコを出して『 生きる 』のオマージュをやってのけています。(ちなみに『 若き勇者たち 』は②⓪①②年に『 レッド・ドーン 』としてリメイク映画化されました)
黒澤映画はイラン映画界に強い影響を及ぼしており、先ごろ亡くなったアッバス・キアロスタミ監督をはじめ、多くのイラン映画界の才人たちは来日するたびに黒澤映画のことを熱く語ってくれます。そのなかのひとりアボルファズル・ジャリリ監督は『 ダンス・オブ・ダスト 』(92)『 少年と砂漠のカフェ 』(01)など自作の中に黒澤映画へのオマージュ的ショットを盛り込むことを怠りません。