「源氏物語の世界」③雅楽…尾張みやび会
尾張みやび会の皆さんが、雅楽「越殿楽」「胡蝶」「青海波」を披露しました。
越殿楽(えてんらく)

 

 

 

みやび会1 みやび会2
雅楽の中で一番有名な曲 といわれます。めでたい時に演奏される曲と言われたりしますが、越天楽にも3曲あって、結婚式でよく演奏されるもの、お葬式でよく演奏されるものがあります。有名なのは平調(ひょうじょう)の越天楽で、メロデーもよく、「越天楽今様」や福岡民謡「黒田節(くろだぶし)」のもとになった曲です。この曲は有名なわりには分からないところが多く、誰が作曲したのかいろいろ説があります。もしその一説「漢の文帝作」が本当だとすると、越天楽は中国は漢の時代(前漢 紀元前180-157年)の音楽で2000年前の曲となります。紀元前に作られた中国の曲が日本の雅楽の中で一番演奏されているのはおどろきです。

 

 

胡 蝶

 

 

みやび会4 みやび会3

 

【曲の由来】

延喜六年(906)に、宇多上皇が童相撲(わらわ〈わらべ〉ずもう)に行幸された時、曲を山城守藤原忠房が作り、舞を式部卿敦実親王(しきぶきょう・あつみしんのう)が作ったといわれています。この二人は、右方舞の代表的作品「延喜楽(えんぎらく)」の作者でもあります。いまで言うところの売れっ子作曲家と振り付け師(?)のコンビだったようです。

胡の国の蝶が喜々として遊ぶさまを舞にしたともいわれ、左方の「迦陵頻(かりょうびん)」が番舞(つがいまい)で、共に数少ない童舞(わらべまい・どうぶ)であります。

【童舞について】

一般的には、舞楽は大人が舞うのが常でありますが、何曲かは子供に舞を教えて舞うものもあります。代表的なものが、「迦陵頻」と「胡蝶」です。この二曲は子供のための舞で、大人は舞いません。

それ以外に、大人の舞を子供に教えて舞を行うこともあります。たとえば、左方ならば「蘭陵王」や「抜頭(ばとう)」などで、右方ならば「納曽利(なそり)」「還城楽(げんじょうらく)」「貴徳(きとく)」などです。これらは大人の舞振りを行いますので子供らしい愛らしさは見られません。しかし、迦陵頻や胡蝶は、童舞専用に作られた舞振りですから、舞の動きや仕草に愛らしさが感じられます。

【装束について】
左方の代表的な童舞が迦陵頻ならば、右方の代表的な童舞は胡蝶です。衣装は、美しい蝶の羽根を背に付け、山吹の花をさした天冠をかぶり、山吹の花の枝を持って舞います。身につけた袍(ほう)は、青色精好紗に、か紋と胡蝶が色糸で刺繍(ししゅう)してあります。袍も子供用仕立で小ぶりで刺繍もそれに合わせて小ぶりです。刺繍の蝶は、五種類あり、非常にきれいです。また、袴(はかま)にも同じ刺繍がしてありますが、この蝶の刺繍は袍とは違った角度で作られています。背には、羽根をつけます。大羽根・小羽根・背・腹と四枚でできています。

 

青海波(せいがいは)

 

 

みやび会6 みやび会5
【曲の由来】
一説には、中国西域地方の青海省の地名を用いたという説。また、和邇部太田麿(わにべのおおたまろ)が曲を作り、良峯安世(よしみねのやすよ)が舞を作り、小野篁が詠を作ったともいわれ、我が国が産んだ舞曲であろうと考えられています。特に、打ち物の奏法に千鳥懸(ちどりがけ)、男波(おなみ)、女波(めなみ)などという粋な美しい名称が付けられています。

【楽曲について】
青海波の楽曲は、現在は盤渉調(ばんしきちょう)が原曲で、それが黄鐘調(おうしきちょう)に移調されたと言われています。しかし、山井清雄氏蔵の笛の楽譜には、「昔者平調曲也而来和御時依初被遷当調子多」とあります。この書物がいつごろ写されたものかは不明ですが、元々平調の曲であったというのも演奏内容からすればうなずけます。また、安倍季昌氏蔵の篳篥の墨譜によると、手付け(運指)は現在我々が演奏しているものと同じです。これは安倍季氏(12731353)の篳篥抄を書写したものです。西暦1200年ごろの譜面の手付けが今と同じということに驚いています。長い歴史があっても、演奏技法は変わっていないことを改めて確信しました。
【装 束】
青海波の装束は、他の左方襲(さほうかさね)と比べると格段の違いがあり、別装束です。頭につける甲(かぶと)から足先まで、すべて千鳥に関わる文様が施されています。甲では、丸金具は千鳥と霞が使われています。装束では、一番上の袍(ほう)は萌黄顕紋紗に六分波形の文様を幾重にも重ねた地紋です。これを俗に青海波紋と呼びます。その紗の上に表裏会わせて約80か所に千鳥の刺繍が施されています。その下に着る半臂(はんぴ)も別拵えで萌黄地の綾錦に牡丹・唐草・五か・花菱が織りだしてあります。袖先と襟は、紅地金襴に散雲の金箔通しという豪華絢爛な仕上げです。さらに、その下の下襲(したがさね)は立浪と霞の刺繍が施され、袖先と襟は紅色の綾織がつけられています。さらに、袴では膝から下は紅地金襴の別布仕立が施されています。またさらに、忘緒(わすれお)も半臂と同様に文様生地が使われています。装束以外には、太刀をつけますが、鞘には千鳥と波文様が蒔絵と螺鈿で付され、金具は枝菊の透彫りになっています。さらに、太刀には垂平緒が下げられ、それにも千鳥と立浪が刺繍された五彩の房が垂らされています。以上、説明できないくらい千鳥と波文様にこだわった装束はこれ以外にはありません。
                                   (おやさと雅楽会のHPより)