先日お会いした韓国の元統一部長官であった康仁徳(カンイントク)さんの話の中で、今年北朝鮮の憲法が改正され、「先軍政治」という言葉を冒頭に入れたそうだ。このことは、日本の新聞ではほとんど報道されていないが、この「先軍政治」とは、文字通り“軍が先頭に立つ政治”のことであり、何事においても軍事が優先することを示している。金正日は軍を把握する最高指導者であり、住民よりも官僚よりも政治家よりも軍人が上に立つ。


軍の象徴は武器である。現在、人を殺傷する最大の武器といえば、すなわち“核”のことだ。「先軍政治」を北が打ち出したことにより、米国や中国などの圧力によって核を放棄することなど絶対ありえない。どんなことをしても北は核を所有し続けるだろう。


核に対抗するための通常兵器は存在しない。核に対抗するには核しかない。そう考えると、北朝鮮が核を持ち続けることを意味がはっきりしてくる。地政学的に極めて重要な地域に位置しているこの北朝鮮が生き残っているための最大の手段として核保有を選択したのだ。そして、このことは北を取り巻く国々にとっては最悪の選択であるのだ。


韓国はもちろん日本も北の核の射程距離内に入っていて、アメリカもすでに到達するまでのミサイル弾道弾の技術を開発したとしているが実際はどうであろうか。これに対峙するために、韓国では核保有を明言するナショナリストも出てきている。アメリカは絶対それを許さないだろうが、万一、韓国が核を持つなら、日本も核保有の議論が沸いてくるのは必至だ。いわゆる核のドミノ論である。そうなると東アジアは地球上で最も危険な地域となる。


朝鮮半島をかつてのバルカン半島のような火薬庫にしてはならないと思っていたが、すでに火薬庫そのものだ。最も現実的な方法は、より一層日米韓の同盟関係を強化しどこにも手を下せないように防備を整え、戦争は北朝鮮の滅亡につながることを思い知らせる事、それ以外にない。特に日本と韓国は今後ますます重要な関係を築き上げねばならないだろう。


強固な日韓関係を構築するために横たわる最大の懸念であり課題が、双方の「歴史認識」の問題だ。このことについて、康さんはひじょうに楽観的だった。「大切なのは、歴史の真実を知る事だ。そこからは日韓の真の友情が始まる。」「今の韓国の若者は日本に対する考え方は、古い世代のそれと明らかに変わって来ている。日本と韓国の若者たちは、きっとうまくやっていくだろう」と云々。


まったく同感だ。今、日韓両国が、極端な民族主義を掲げるなら、当然うまくいかない。歴史の真実を基に、深く洞察し相互に理解することが大事だ、時には歩み寄りも必要だろう。そうしながら日韓の紐帯関係を深めていきたいものだ。


それにしても、北朝鮮は今後どうなるのだろうか。21世紀はイデオロギーよりも経済の世紀になってきたが、この地球上で唯一イデオロギーを掲げて国を統治している北の行く末に目が離せない。


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