行政書士の大越です。
ちょっと昔のことを思い出したので、今日はその話を書いてみようと思います。
私と、中学校でいじめを受けていた、ひとりの中学生との間にあった話です。
個人的に、「教育行政ってなんだろう」と思索する時に、いつもベースにしているものです。
思い出しがてら、書き散らしてみたいと思います。
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1990年代の話です。
私はその当時、地方公務員で、区画整理事務所の事務所長の職にありました。
区画整理とは、曲がりくねった道を太くまっすぐにしたり、工場を一箇所に集めるなどして、その地域を便利に、また土地利用を効率的にするための事業です。
当然、家や建物は簡単に動かすことができないので、家を建て直したり、土地を交換したりしてもらうことになる住人もいらっしゃいます。
そのため、土地や建物の権利関係が複雑になったり、工事の順番を決めたりと、手続が煩雑になるので、区画整理を行う時は、専門の事務所を作って、そこが事務を集中して行います。
ただし、立派な事務所を作ってもしかたがないので(区画整理事業が終わったら不要になりますから)、普通はプレハブ事務所にして経費を節約します。
私が所長をした区画整理事務所も、2階建てではありますが、簡素なプレハブ事務所でした。太陽光がきつかった覚えがあります。
その日の朝、事務所2階の自分の席からふと外を見ると、区画整理事務所の敷地の隅の陰に、隠れている中学生がいるのが見えました。
その中学生は隠れているつもりかも知れませんが、上から見ると意外とよく見えてしまうものです。
私は、「友達でも待っているのかな?」と思い、その時は気にもとめませんでしたが、一時間後ぐらいに窓の外を見ると、その中学生はまだそこに隠れていました。
さすがに不自然なものを感じたので、手元の仕事が一段落したら、その中学生に、そこで何をしているのか、聞きに行こうと思いました。
しかし、ようやく一段落して、私がようやく外に出た時には、すでにその生徒の姿はありませんでした。
私は朝隠れていた中学生の話を部下にして、何か知っているか聞いてみました。
すると、「ああ、その子なら、近所に住んでいる子ですよ」とのこと。
わざわざ一時間以上も隠れていたことが何かひっかかり、私は昼過ぎに、部下にその家の場所を聞いて、訪れてみることにしました。
その家の玄関を叩いてみましたが、返事はありません。カギもかかっています。
しかし、人の気配がするというか、中に誰かいるのはわかりました。
そこで、庭の方に回ってみました。
すると、居間にその中学生がいました。
私は、窓を開けて、その中学生に言いました。
「私は、近所の区画整理事務所の、所長をしている大越というものだ。
君は朝、事務所の陰に、ずっと隠れていただろう。
心配だからちょっと来てみた。
話を聞きたいから、今から事務所に来てくれないだろうか?」
突然の、予想もしない訪問者にぎょっとした様子でしたが、その中学生は私の言うとおり、事務所まで一緒に来てくれました。
中学生を事務所の応接ルームに通し、なんで朝あんな所に隠れていたのか、聞いてみました。
その答えは、次のようなものでした――――。
「なぜ、あんな所に隠れていたのか?」
「自分はいま、クラスでいじめられている。学校に行きたくない。
自分の親は、共働きなので、昼間は家に誰もいない。
だから、学校に行ったふりをして、親が出かけた後、家に戻っていた」
「誰かに相談などは、していないのか?」
「していない。したら、それをネタにまたいじめられてしまう」
「いつから、学校に行っていないのか?」
「3日ぐらい前から」
私は教育論は詳しくありませんが、それを聞いて、何となく、「事態がまだ深刻でない今何とかしなければ、いけない」と思いました。
すぐに学校や親に連絡を取ることも考えましたが、いきなりそのようなことをしても逆効果な気がして、とにかくこの場はこの中学生の話を聞こうと思いました。
家族のこと。学校のこと。勉強や、趣味のこと。
少しずつ、自分から話してくれるようになりました。
話が進むうちに、例の、いじめの話になりました。
私はその時、『いじめはよくない』とか、『元気を出して』などのありきたりの言葉は、意味がないような気がしたので、あえて過激な話をすることにしました。
「いじめられたら、やり返さないのか?」
「自分は強くない。相手の人数も多いから、かなわない」
「そうか、、、それなら、そういう時に反撃する方法を教えよう」
「?」
「まずは、いつもどおりいじめられろ。そうして、相手の様子を見るんだ。
そうすれば、誰がリーダーなのか、わかってくる。
そのリーダーがわかったら、一気に、そいつだけに反撃をしろ。
他のやつには目もくれるな。リーダーがやられれば、どうせ何もしてこない。
全員は無理でも、相手が一人だけだと考えれば、まだ何とかなるだろう。
素手だと難しいか?
それなら、何か手に取れ。そうだな。教室なら、椅子なんか、振り回すにはちょうどいいんじゃないか?
相手のケガも、自分のケガも、いっさい気にせず反撃を続けるんだ。相手が何もしてこなくなるまで」
もちろん本当にやれという意味で言ったのではなく、そのことは中学生もそれはわかっている様子でしたが、予想していなかった過激な言葉に、びっくりした様子でした。
「それで相手にケガさせても、そんなに心配することはない。
警察には捕まるかも知れないが、その時は自分が面会に行ってやる。親にも学校にも、自分が事情を説明する。自分が、めいっぱい反論する。
・・・ここまで覚悟決めてやろうと思えば、いじめなんて、そんなにたいしたことではなくなる。
どのみち、今日のようにいつまでも区画整理事務所に隠れたり、家にこっそり帰っているような毎日を続けても、いつかはばれる。
そっちの方が大問題になる。
早いうちに覚悟を決めて何かしないと、事態が悪化する。
今日はこれ以上何も言わないから、よく考えてみてくれ。
そして、悩んだり相談したいことがあったら、またこの事務所に来て欲しい。
話したいことがあったら、私がいくらでも聞くから」
ひととおり、このようなことを話し、家まで送りました。
ちょっとショックを与えてしまったかなぁと、思いました。
そして事務所に戻ると、中学校に電話をかけました。
その中学校の教頭先生とは、仕事関係で顔見知りでしたので、自分のことはよく知っていました。
ほどなくして、その中学生の担任と学年主任の先生が、区画整理事務所を訪ねてきました。
(次回につづく)
※長くなりそうなので、続きは次回に描きます。
冷静に書き出すと、私の行為は、公務員としては越権行為が甚だしいですね。現在だったら問題になってるでしょうか。