読んだ本
データでわかる 世界と日本のエネルギー大転換 
レスター・ブラウン
枝廣淳子 訳
岩波ブックレット 
2016.01

ひとこと感想
基本的なデータに基づきながら、世界各国で進められている脱原発・脱化石燃料の動きを紹介。R・ブラウンの「大転換 新しいエネルギー経済のかたち」の内容をもとに、枝廣が再構成したものというが、おそらくほとんど枝廣の本ではないだろうか。

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ブラウンは、1934年米ニュージャージー州生まれ。74年ワールドウォッチ研究所を
創設。また2001年アースポリシー研究所を設立、所長に就任。「環境的に持続可能な発展」の概念「プランB」を提唱、環境問題のオピニオンリーダーとして活躍した。

枝廣は、1962年京都生まれ。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境ジャーナリスト、翻訳家。幸せ経済社会研究所所長。東京都市大学環境学部教授。訳書に「アル・ゴア未来を語る-世界を動かす6つの要因」など。

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地方創生とローカルエネルギー

再生可能エネルギーは、地方で生まれ、地方を支え、地方を生かすものである。

「発電」に関して「バナキュラー」と言えるのは、太陽の日差し、風、河川の水、地熱、森林資源などによる再生可能エネルギーしかない。

これまでの「地方創生」とは、たとえば福島県の場合、火力や原子力が主だったものだった。

これをどこまで各地域に根差したものにすることができるか。

世界風力エネルギー協会は「コミュニティパワー三原則」を以下のように定義している。

・地域の利害関係者がプロジェクトの大半もしくはすべてを所有している
・プロジェクトの意思決定はコミュニティに基礎をおく組織によって行われる
・社会的・経済的便益の多数もしくはすべては地域に分配される

さて、今の私にただちに思いつくのは、グリッド(送電網)の問題である。発電はよいとして、どのように導電、配電するのか、この部分がうまく「地域」でつなげられないと、結局、頓挫してしまう。

こうした地域を主体とした再生可能エネルギーの取り組みを促進しようという条例をもっているのは、以下の自治体である。

・湖南市(滋賀県)
・飯田市(長野県)
・八丈島町(東京都)

また、自治体自らが再生可能エネルギーの発電事業者となっているところは、以下である。

・寿都町(北海道)

人口3,200人、一般会計規模40億円に対して、町営の風力発電所は売電収入が約6億円にのぼるという。

次に、小水力発電をはじめようとしているのが、以下である。

・白鳥町石徹白(岐阜県郡上郡)

農業用水路を使っている。

他方、太陽光については、以下がある。

・山都町(熊本県)

10世帯18人の水増集落ではソーラーパークを誘致している。

ほか、徳島県n徳島地域エネルギーは、耕作放棄地や廃校跡にソーラーパネルを設置している。

・南相馬市(福島県)

現在1億キロワットアワーを超える発電が可能なメガソーラー計画が進んでいる。

ただし太陽光については大手が多数乱入して制度が歪んでしまったため、地元のコミュニティ型発電は今、窮地に立たされている。

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本書は「大転換 新しいエネルギー経済のかたち」の内容をもとに、枝廣が再構成したものである。

「化石燃料に頼る経済」から「再生可能なエネルギーを主な原動力とする経済」への移行が、すでに世界中にみられる。

しかし冷静に考えれば、日本においては、そうではない。

・原発 事故リスク、核廃棄物の問題
・再生可能エネルギー 比率が伸びない、コストが高い
・化石エネルギー 輸入コストやリスクが高い、温暖化問題

前述したように、私が今思うのは、「国」としてのエネルギー政策はさておき、各地域においては、それぞれが独自にエネルギー施策を構築してゆくことが、今後の「地方創生」においては重要なことであるように思われる。

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目次 
      
加速するエネルギー大転換
古いエネルギー経済の衰退 石油、石炭、原子力
新しいエネルギー経済の隆盛 ソーラー、風力、地熱
勢いを増す世界、遅れをとる日本


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