2-1.束縛

 

 私は最初に就職した医院以後、非正規雇用で働いてきました。


 それには様々な理由がありますが、就業時間にこだわったことが一番でした。
 父の生活時間帯は朝三時から夜八時。

 朝は弁当のおかずを用意しておけば、後は自分で適当に詰めて持って行きます。

 お風呂は家風呂ができても、『銭湯が良い』と言って銭湯に行きます。

 

 ただ、夕飯だけは自分では何もしませんでした。

 仕事から帰ると、すぐに銭湯に行くので、その後に買い物などできないという理由でした。
 父はとにかくマイペースで、(私が自分に合わすのが当然)と思っていましたので、私は嫌でも、夜八時までに夕飯を用意しなければならなかったのです。


 そうなると必然的に、私の帰社時間は決まってきますし、通勤時間を考えると勤務地も限られてきます。また、私の性格上、興味のない職種の仕事では当然長続きしませんので、結果として転職を繰り返すことになりました。

 父に『おまえは辛抱が足らん』と叱られる日々の中、年齢が上がると共に就職活動も長期化し、困難を極めるようになるという悪循環でした。


 私の置かれている境遇は中途半場としか言いようがなく、主婦でもシングルでもない、【主婦もどき】と自分で呼んでいました。

 残業ができない理由として、小さな子供が待っているのならまだしも父親。

 それも元気な場合では説得力に欠けました。

 それでも繁忙期など予測がつく時は、事前に父に理由を言い、用意してある物で先に夕飯を済ませてもらっていました。

 

 困ったのは急な残業をする時でした。