高校2年のとき、オーストラリアから白人女性の交換留学生が来ました。

1学年上の人ですが、日本では2年生となり、私と同じクラスになりました。

仮に名前を、ベッキーとしておきます。

ベッキーは、日本でボーイフレンドでも作ろうと思ったのでしょう。積極的に男子グループに接触してきました。

男子の中にはスケベなやつもいて、そんなベッキーにむかって、片言の英語で「アイ ライク オナニー」などと言うけしからんのもいました。田舎の男子高校生にとって、金髪の白人女性と仲良くする機会などないし、ついついセクハラ発言をしてしまったのでしょう。

それでもベッキーは、昼休みなどに男子グループがたまっている部屋(名称は忘れましたが、雑誌や本が置いてある、図書室とは別の部屋でした。資料室だったかもしれません)にやってきました。

修学旅行では、夜に男子の部屋に遊びに来ました。見回りの先生が来たので、ベッキーを布団に隠したのですが、ベッキーの長い金髪が布団からはみ出していて、見つかってしまいました。

当時は、体罰が当たり前の時代だったので、ベッキーも見回りの男の体育の先生に叩かれていました。ベッキーは泣いていました。叩かれたのが痛いのではなくて、ルールを破って怒られたことの精神的なものでしょう。

その少し前の夕食後のとき、カラオケ大会があり、その男性体育教師は歌をうたいながら、近くにいたベッキーの肩を抱きました。いまならセクハラですが、当時はセクハラという概念はありませんでした。ベッキーも困ったのか、大げさなジェスチャーをしていました。

ベッキーはカラオケのとき、自分に好意的態度(いまならセクハラですが)だった先生に叩かれたこともショックだったのかもしれません。

ベッキーの思い出は、他にもあります。

初めてベッキーが来て、自己紹介したとき、ベッキーは彼氏がいて、彼氏の家に泊まりに行くこともあると言っていて、さすが日本とは違うと思いました。

私が自己紹介するとき、みんなは英語風に苗字と名前を逆にするのですが、私だけは逆にしませんでした。それをおかしいと言うクラスメートもいましたが、私は欧米人は日本に来ても、日本風に苗字を先に言わないのに、なぜ日本人だけが日本に居ながら欧米人のマネをするのか、という気持ちがあったので、苗字を先に言うことにこだわったのです。いまでは、この考え方を理解する人もいるでしょうが、当時は「常識」に反することでした。

ベッキーは男子に混じって剣道の授業をしていました。白人なので、女性でも背が高いです。そんなベッキーと竹刀を合わせるとき、私は必ずベッキーに、1本だけ面を打たせました。サービスでしたが、ベッキーは私が弱いと思ったのか、いつも面の奥の顔は笑っていました。

私は、コミュニケーション障害気味なので、ベッキーとしゃべらず、挨拶されたのに頭がパニックになって、無視したこともあります。悪いことをしました。

いまから考えると、せっかく白人女性と友達になるチャンスだったし、ベッキーも日本の男性と仲良くしたがっていたのだから、もっと話せばよかったと後悔しています。