若いとき一人暮らしをして、工場で働いていた事があります。

あるとき電気屋さんに行くと、同じ工場で働いている女性と、その母親らしき人が洗濯機など大型家電を一通り買っていました。

私はもしかして、嫁入り道具ではないか、と思いました。

その女性は別の部署で働いていて、話をしたことはないけど、私と同じスクーター通勤だったので何度も駐輪場で見かけています。

綺麗な女性でした。

そんなある日、私のアパートに電話がかかってきました。なんと、その女性からでした。

会いたい、とのことです。

事情を聞くと、特に好きでもない相手と見合い結婚をすることになったので、その前に私と会ってみたい、とのことでした。

後でわかったのですが、彼女はわざと私が通勤するのと同じような時間帯にスクーターで通勤して、そのスクーターも、わざと私のスクーターの横に停めたりしていたそうです。

そういえば、私のスクーターの横に彼女のスクーターが停めてある事がたびたびありました。

駐輪場でよく見かけたのも、わざとだったのです。

私が若いときは、結婚はするのが当たり前の時代でした。

三十を過ぎて独身だと、変わり者扱いされたりする時代でした。

特に女性は、結婚をしないと生活が大変だったのです。女性は結婚して寿退社が当たり前の時代でした。

女性は三十歳とか三十一歳が定年と言われたり、女性がいつまでも会社にいると嫌がられたりする時代でした。

結婚後も職場にいた場合は、妊娠出産で退職。とにかく、女性がいつまでも正社員として勤務を続けるというのが歓迎されない時代でしたし、女性のほうも就職は、結婚までの「腰掛け」と考えるのが普通でした。

結婚したり出産しても職場に残り続ける女性は、「お局様」として敬遠されて(未婚の女性の場合が多いのかな?)、特殊な存在でした。結婚後や子供を保育園などに預けてパートなどで働く女性は当時もいましたが、正社員として定年まで働き続ける女性は一般的ではなかったはずです。

男女雇用機会均等法などもその時代にできた法律で、裏を返すとそういう法律を作らなければならないぐらい、男女の差がありました。そして法律ができても、世の中の意識が一気に変わるわけではありません。

女性の職業欄に「家事手伝い」と書いてあるのが珍しくなくて、それが「花嫁修行中」として好意的に思われていた時代だったのです。

私の若いときは、女性の社会進出や女性が職場で働き続けるのが当たり前になっていく(ことを目指す、というのは現在でも女性は不利な扱いが残っているからです)その過渡期で、男女雇用機会均等法の制定は書きましたが、セクシャルハラスメントという言葉が定着したのもその頃でした。

それでも時代というのは、急激に変わるものではありません。田舎ならなおさらです。

そういう時代背景を知らなければ、好きでもない男と結婚するというのは、あまり理解できないかもしれません。

親や周りからの圧力(これが本当に強い。女性は男性以上でしょう)。そして本人も、「結婚しなければならない」という思い込みがあります。学歴も資格もない女性が、ひとりで生活を続ける事も困難な時代でした。女性は結婚して男性に養ってもらうという事を前提とした社会が長く続いていたのです。

だからその女性も、好きでもない男と見合い結婚をすることにしたのです。

ただその前に、私と会いたいとのことでした。

私としては嬉しかったです。

その女性は私より一歳年上でした。何より美人です。

当時の私はアパートで一人暮らしをしていて、恋人もいませんから、自然な流れで私のアパートに彼女を招待しました。

彼女はずっと私に好意を持っていてくれたそうで、今と違って個人情報の取り扱いも緩いですから、私の電話番号を職場で調べて、連絡をくれたのでした。余談ですが、自動車学校に行ったとき、各自の個人情報が書かれた書類(何に使うか忘れましたが、教官に渡すとかだったと思います)が無造作に受け付けのとこに並べて置いてあり、見ようと思えば誰でも見られるので、私が田舎から出て来ていることとか年齢とかも知っている女性もいました(同期はほとんど女性)。そんな事が当たり前の、プライバシーに関して緩い時代だったので、電話番号を職場でこっそりと調べるぐらいはできたのです。

彼女は美人ではありますが、大人しい性格で、男性と交際した経験もなく、それでもいつかは好きな男性と結婚したいというごく普通の希望を持っていました。

しかし彼女は二十代半ば(半ばといっても本当の半ばです)で独身で、女性は二十代後半になるとなかなか見合い相手も限られてくる(あくまで当時の田舎での話です)という現実があり、それで好きでもない男との結婚を承諾したそうです。

彼女は一歳年上でしたので、私は二十代前半、誕生日の関係でもしかして二歳年下だったか、ちょっと忘れました。というのも、私にとって重要なのはあくまで女性の年齢だったので、自分のことは覚えてないのです。そもそも誕生日の関係で二歳ずれるもんでしたっけ? もしかして私二歳年下だった? いや確か彼女は一歳上だと言っていた記憶が。思えば私って相手の女性の生年月日を知らない。女性の生年月日を聞くのが失礼という感覚が強く、年齢の話も向こうからしなければ私からは聞いてないと思います。向こうが私の年齢を聞いて一歳年上だと言っていたんです。もしかしてお姉さん、一歳サバ読んでた(笑)。これ書きながら、いま思い出した。

一歳年上でも全然お姉さんぽくない初心な女性と、まったく女慣れしてない(相手には言ってないが風俗経験しかない。これを言うと女性に嫌われる場合があるので言えない)会話下手な男の即席カップルなので、本当にギクシャクして何も会話ができないし(お互いの自己紹介的なこととか、上に書いた経緯ぐらいしか話すことがなかった)、しかもずっと心臓ドキドキで声が上ずって、結局は沈黙が気まずくなって、逆にそれでお互いが無言で大胆になるというよくわからない展開だったことは記憶にしっかりと刻まれています。本当に緊張した。特に男のほうがリードすべきというプレッシャーは、相手がプロなら必要のないものでしたから。

彼女の願いは、好きでもない男と結婚する前に、好きな男との思い出を作るというものでした。その前提があるので、小心な私が大胆になれたのです(おそらく同年代の男と比べたら大胆でも何でもないと思いますが、相手も初心なのでそんな私でも物足りないとかはなかったそうです)。

大人しい性格の女性が、勇気を振り絞って、話もしたこともない私に電話をくれたのです。

その日の夜、私のアパートの部屋で彼女とどう過ごしたかは、あえて書きません。何度も大胆とか言ってますが、大胆と言ってもいろいろありますから。ハグしただけかもしれませんし(笑)。

この話は、親しい人にもしたことはありません。おそらく彼女も誰にも話してないでしょう。お互いが親友にも絶対に話さない事を確認し合ってますし、どちらも異性とのことを吹聴するタイプではないからです。アパートへの出入りも人に見られてないはずです。そこら辺は慎重にやってます。大声での会話もしていません。だからこの秘密を知っている人は、いないでしょう。

匿名のブログだし、もう時効だと思うから書きますが、それでも一歩間違うと彼女と旦那さんとの間に亀裂が入りかねないので、詳しい事は省きます。

もし私との思い出が、彼女の人生の中で、独身時代の最後の思い出として良い形で記憶に残っていてくれたら、幸せです。

私としても男性として、結婚前の女性が、わざわざ私との思い出作りを、下手をすると結婚が破談になりかねない危険を犯してまでも、希望してくれたということは、本当に光栄なことです。

遠い昔の、若かりし時代の思い出話です。


追記。かなり昔の話で記憶が曖昧な部分があります。女性は一学年上の早生まれの可能性もあります。そして付き合っていたわけではないので、実はそれほど彼女の事を詳しく知っているわけではないのです。

また、向こうが年齢をサバを読んでいる事がないとは言い切れませんし、私が記憶違いしている場合もありえます。

場所も私のアパートではなかったかもしれませんが、ホテルではなかったはずです。近くに派遣の寮があり、彼女の知り合いが使わなくなって空いていたとか何かあったかもしれませんが、そういう細かい部分の記憶が曖昧になってしまっているのです。

もともと記憶力が悪いので、これはブログの他の記事も同じなのですが、記憶違いで書いている場合もあるのでご容赦ください。


追記の追記。

もしかしたら彼女のほうが一時期、親と距離を置くために派遣の寮に入っていたのかもしれません。親に結婚の話をされるのが嫌で、という話があった気もしますが、これも他の人の話と混同しているかも。

あるいは隣の大きな市のほうに行った? ホテルでない事は確かだし、私の仲の良かった先輩はすでに地元に帰っているから部屋を借りたわけはないし、後は学生時代の同級生で他所の県から来ていて仲の良かったのがいたけど、果たして女性を連れて部屋など借りに行くとは思えない(向こうも迷惑だし、私もそんな事しないはず)。

なぜここまで記憶が曖昧かというと、もちろん遥か昔のことのせいもあるけど、印象に残っているのが彼女と2人で過ごした、そこの部分だけがもの凄いインパクトとして記憶されていて、他の部分の記憶が本当にあやふやになってしまっているからです。

つまり自分にとっても、そういった周辺の記憶というのは、いわばどうでもいい記憶なので、曖昧にしか覚えてない。

一方でこの女性個人の記憶のほうは、それまでヤンキーとかテレクラ狂いの人妻とか、高校を中退するような不良女性としか付き合いがなかった私からして(大人しい私が、なぜそういったタイプの女性と接点があったかというと、そういったタイプの女性と仲良くしている男と仲良かったから。そうでなければ一生、縁が無いような女性たちでした。ちなみに恋人付き合いはしていないし、出来ない)、この女性は仲良くした女性の中で初めての大人しい一般的な女性で、しかも向こうからいきなり電話してくるという思いがけない形だったので、強烈に印象が残っているし、私もなんだかんだで風俗嬢以外は上記のようなタイプの(差別のつもりはないけどマジメな女性はいなかった)女性との一時期な付き合いの経験しかないから、本当にどうしていいか分からない(つまり、こちらからリードすべきだけど、そんなスキルが無さすぎる)という内心の不安というか緊張みたいな記憶がないまぜになっているので、とにかくそこだけが記憶に刻み込まれているため、他の記憶は完全に霞んでます。

私、こんな話は周りの人に話すこともないけど、上記のテレクラ狂いの人妻の胸で窒素しそうになったとか、過去のブログにも書いたと思うけど、お姫様抱っこの失敗や腕枕が苦手とか、情けないエピソードならいくつかあります。

すべて若いときの話だけど。