夢は叶うか?メガスター開発から学ぶ夢の実現方法 | 大平貴之のブログ

夢は叶うか?メガスター開発から学ぶ夢の実現方法

夢をかなえる方法

夢は願えば叶う、と言う人が良くいます。
希望を感じさせる綺麗なことばだと思います。
ぼくがメガスターを作ることが出来た事こそ、その好例だ、と捉える人も多くいます。

皆が不可能だと思ってきたことを信じてあきらめないで作り上げて実現したことに共感してくれる人が多いのは嬉しいことです。
でも、現実はそんなにシンプルではありません。

僕は、夢は願えば叶う、とも思っていません。

少しでも参考になればと、この視点から僕自身の事例を振り返ります。



ぼくがレンズ式プラネタリウムを作ろうとしたのは小学校6年生の時でしたが、近くのレンズ工場から余り物のレンズをたくさんもらえる等の幸運に恵まれつつも、残念ながら全く実現はできませんでした。

大学生になって、レンズ式に挑もうと再び考えました。使えるお金も知識も小学生とはだいぶ違います。しかし、本当に出来るかどうかが最初は一番の課題でした。
レンズ式プラネタリウムを作るための最初の課題はレンズです。
僕は大学1年の時に、レンズを何種類か買って、広い範囲に星を映せるかどうか調べま
した。
次の課題は座標計算でした。原板のどこに穴をあければドームのどこに星が映るか、と
いう計算です。僕は数学が苦手でしたから大変苦労しましたが、方眼紙に何枚も図を描いてポケットコンピュータに入力して何とか計算方法を編み出すことに成功しました。
続いて星の原板です。これにはいくつか作り方がありましたが、ぼくは既に写真の知識
がありましたので、拡大した原稿を大きな紙に書いて、それをカメラで縮小撮影して原

板にすることを考えました。この方法は高校時代にフィルムでプラネタリウムを作った知識の応用で、精度はどうであれ、最低限、原板を作ることはできそうだとわかりました。
アストロライナー計画は、大学1年から大学4年までの間ですが、以上の検討は、いずれ
も大学1年の夏頃までの事です。つまり初期の段階に、出来るかできないか、を分ける一番キーとなる技術の確認をしたわけです。これができるとわかって僕はアストロライナー計画をレンズ式にすることにしたのです。そのあとの道のりは大変長いものでしたが、それは、如何に高い性能を実現するか、と考えていたからです。レンズ式を作る、という所以外の目標設定はかなりあいまいで、作りながら自分の技量と照らし合わせて作るものを考える、というやり方でした。


ですから、やることを最初に決めて進んだのではなく、
1)最低限できるかどうかを見極める
2)自分の技量に従って出来る限り良いものを目指す。

というやり方でした。
できる事とできない事を見極め、できるかどうかわからない事は、調べつつも、結論が出るまで一切あてにしないで進める考え方だったのです。




メガスター制作の時は、レンズ式プラネタリウムの基礎技術は既に持っていたので、如何に扱いやすくするため、小型軽量化するかということが一番の課題でした。アストロライナーは設計上、大変無駄の多い投影機だったので、その無駄を省いて作り直すだけでも十分価値がありました。
でもせっかく作るなら星の美しさもこだわりたいと考えだし、もしかしたら100万個星
を投影すれば凄いものができるかもしれないなと考えました。
そんなものができるかどうか。やはり最初の段階でかなりの検討をしました。
1ミクロン以下の穴をあけることができるか。そのためにはレーザーを使えば出来るは
ずとわかりました。焦点合わせなどの方法も調べるうちにできるだろうことが分かったのです。
一足飛びの技術革新のように見えますが、実質的には大学時代のアストロライナーの原
板作りの技術の応用でした。その一部を改良することで精度を大幅に高められることが分かったのです。

原板の試作ができるまでは、確かにリスクがありましたが、100万個の星は、できれば実現するし、そこまで出来なければ、出来る範囲で形にすればいいと思っていました。

とにかくほしいのは小型軽量のプラネタリウムでしたから。

結果的には100万個以上の原板もうまくいったので、メガスターという名前を付けたマシンを実現することができたのです。100万個はいわばおまけのようなものでした。


どうですか?
最初に壮大な夢を設定し、それができる、と信じて進むのも素晴らしいです。
でも僕の場合は少なくともそうではありませんでした。
最低限のマイルストンを決め、そこに到達できるか最初に調べたうえではじめ、あとはどこまで石を積み上げられるかは、進みながら考える、というやり方でした。
結果的につみあがったからこそ、さらに次の地平線が見えてきたということです。

フジテレビで放送された僕の半生記「星に願いを~」の最後の台詞です。
「最初は小さな夢でいい。叶えることでもっと大きな夢につながるのだから」

これが僕の経験からくる思いです。

参考になればとおもいます。