「ストーリー」と聞いて、何を思い浮かべますか?

 

人によって、昔読んだ本のストーリー、観た映画のストーリー、尊敬する人のストーリー等、様々だと思いますが、ストーリーは無意識のうちに私たちの行動に大きく影響を及ぼしています。

 

本や映画は分かりやすいストーリの例ですが、ストーリーの要素は、学術的な論文や理論の中にもあります。

例えば、私が大学の一般教養で学んだ心理学者フロイトの理論は、同氏が様々な臨床経験(多くの精神疾患の患者のカウンセリング)をもとにして、特に共通している事象を論理的に説明できるように、フロイト自身がある種のストーリーを創作的に考案し、それを理論として構築していることは明らかでした。それを指摘しているのは私だけではなく、私が別件でお世話になった経済学部の教授も同様のことを言っておられました。

 

ニュートンの万有引力も「リンゴが地面に引っ張られた!」というストーリー的な解釈から始まります。

「地面には引力がある」や「モノは同じ方向に落ちる」ではなく「地面がリンゴを引っ張った!」というドラマチックとも言えるストーリーとして見えたことが大きな発見につながったのではないかということです。

 

視点を移すと、夏の甲子園が注目を集めるのは、各選手やチームのプレーの背後にあるストーリーに共感することに大きな理由があり、更に、新しくストーリーが生まれる瞬間を見たい、という想いもあるからです。箱根駅伝もWBCもFIFAワールドカップも、その他、様々なスポーツに通じる要素です。

 

私たちは、あらゆる物事を無意識のうちに「ストーリー」として捉えることによって意味や価値を見出しています。そして、それらのストーリーに無意識のうちに大きく影響を受けています。

 

ストーリーの力をブランディングに積極的に活用する手法を「ストーリーブランディング」と言います。

(まだ比較的新しい概念であり、「ブランド・ストーリー戦略」等、いくつか他の呼び方があるようです)

 

ストーリーブランディングと一言で言っても、人によって捉え方が違っており、いくつかの種類に分類できそうですが、私はその中でも下記の二つの要素が重要であると考えています。

 

①    魅力的なストーリーを企業、店舗、商品、サービスに結び付けることで顧客価値を高める手法

②    企業、店舗、商品、サービスと顧客の関係性をストーリーとして捉えて表現する手法

 

誤解を避けるために、補足しますが、ここで言うストーリーブランディング戦略とは、例えば、店長のストーリーとか企業のストーリーを宣伝に活用するというだけの単純なものではありません。顧客は、そう簡単に他人のストーリーに付き合ってくれるほど暇ではないからです。

 

一般的にブランディングの要素には、ターゲティングやポジショニングを含めたコンセプト、ネーミング、パッケージング、ロゴマーク、ブランドプロミスなどがありますが、そこにストーリーがあるかないかは、飛行機に例えると、揚力を発生するためのスピードが得られるだけのエンジンを持っているかどうかに匹敵するのではないかと思います。

 

つまり、ブランディングで必要と言われている他の要素を満たすことで、主翼などの機体の全ての要素を満たしてどこから見れも飛行機が完成したように見えても、ストーリーという要素が欠けている状態は、完成した飛行機に見えるけれど、自力で自由に飛べるだけのパワーを持たないエンジンがついているようなものではないかということです。それでは、たまたま良い方向から風が吹いた時だけしか飛ぶことができませんので、風向きに合わせて方向を変えなければなりませんし、急に風向きが変われば墜落するような、風任せな飛行になってしまいます。

 

逆に、ストーリーの魅力だけ大きくてブランディングの他の要素が貧弱な場合も自由な飛行というわけにはいきませんが。

 

「良い商品」と「選ばれる商品」の違いがそこにあります。

 

「良い商品やサービス」を作ることと「選ばれる」ことは違います。

 

「良いこと」が分かっても「欲しい」と思ってもらえない、ということも似ているかも知れません。

 

ビジネス交流会で、自社の商品について話をすると「良さはよく分かりました」と言っていただけるのですが、

「欲しい」と感じていただけない、とういことはないでしょうか。

 

もしかすると、「ストーリー」が伝わっていないのかも知れません。

 

今日は、詳細は書けませんが、

上記の①では、共感の度合いの高い真実のストーリーであることが重要です。

上記の②では、自社を主人公にするのではなく、顧客を主人公にしたストーリーであることが重要です。

 

さて、ストーリーをブランディングに活用するという考え方は、比較的新しい領域ですので、人によって主張する内容が違っているように感じます。

 

ある人は、「最近の商品やサービスはどれも同じくらいレベルが高いので、顧客から見ると、どれも大した違いがないように感じて差別化を理解できない。だから、ストーリーで特徴づけることが大切である」と言います。

 

それも、ストーリーブランディングが重要であると言われる一つの要素であることは間違いありませんが、今日、言いたいことは、そういうことではなく、もっと深いところから人間を洞察していくことで、ブランディングにストーリーと言う要素がどれほど重要であるか、ということです。

 
つまり、顧客が、自分を主人公としたストーリーの中にその商品・サービスを取り入れたい(欲しい)と思っていただける、そのようなストーリーを描くことができるか、が大切であると考えています。