森 鴎外「うたかたの記」 現代語意訳版 026 | 鴎外作品(現代語訳)

森 鴎外「うたかたの記」 現代語意訳版 026

学校の門前で馬車に捕まえて停車場にたどり着いた。今日は日曜日だが天気が悪く、近郷(きんごう)から帰る人も多いがここは静かであった。新聞の号外を売る女性がいた。買って見てみると「国王はベルヒ城に(うつ)ってからは容体(ようだい)もよくなり、侍医(じい)グッデンも護衛を(ゆる)くした」とあった。湖水の(ほとり)に避暑に来て、中心街で買い物を済ませてから帰る多くの人は、国王の噂でざわついていた。

「まだホオヘンシュワンガウ城にいた頃と違い、精神的にも静まったようです。ベルヒ城に遷る途中、ゼエスハウプトでは(のど)の渇きを(うるお)しながら休息を取り、近くの漁師たちを優しく(うなず)きながら見ていた。」と買い物(かご)を下げた老女が(なま)りの強い言葉で読み上げていた。


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