森 鴎外「うたかたの記」現代語意訳版 006
「ミュンヘンに来るのは初めてではありません。6年前ここに寄り、そしてザクセンに行きました。その時は「ピナコテエク」の絵を見ただけで、ここの美術学校でこのように人と出会うような機会を持ちませんでした。それは日本にいたときからの目的であるドレスデンの画堂に行こうと、心が急いだからです。けれども再度ここに来て君たちの仲間に入ることとなった。当時もこんな関係を持っていればよかった。」
「大人気ないといわずに聞いて欲しい。謝肉祭が始まる日のこと。「ピナコテエク」の建物を出たときは、雪は止み晴れていた。街路樹の枝のひとつひとつが薄い氷でつつまれたようすが、今ついたばかりの街灯に映し出されていた。異様な服を着て、白や黒の百眼模様を掛けた群集が行き来し、あちらこちらの窓には絨毯が垂れているのを見物した。カルルの交差点にある「カフェ・ロリアン」に入って見ると、おもいおもいの仮装を競い、普通の服をきているほうが目立つようだった。みんなは「コロッセウム」、「ビクトリア」などのダンスホールが開くのを待っていた。」
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ザクセン:
ドイツに16ある連邦州の一つである。1990年のドイツ再統一により加盟した「新連邦州」の一つ。州都はドレスデン。
百眼模様:
ドイツのカーニバルで仮装した人々
多分、鴎外はこのような仮装衣装を見かけたのでしょう。
確かに目玉模様がたくさんあり、鴎外には百眼に見えたのでしょう。
