森 鴎外「うたかたの記」現代語意訳版 003
後から入ってきた男は、汽車でドレスデンから着いたばかりである。店内の様子がドレスデンのものとは違うことに興味を抱いた。テーブルクロスが掛かった大理石の円卓がいくつかあり、食事の片付けが済んでいなかった。クロスの掛かっていないテーブルの客の前には土焼きの盃があった。この盃は円筒形で、日本の徳利の四本分程の大きさであり、弓なりの取っ手がついていて、金属性の蓋が蝶番で取り付けてあった。
客のいないテーブルにあるコーヒーカップは、すべて逆さまに伏せてあり、その糸底の上に砂糖を盛った小皿が載せてあった。
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糸底
茶碗などの底の裏の、輪状に突き出した部分。いとじり。轆轤から切り離すのに糸を使うことから。
ドレスデン(Dresden)
チェコ(Czech)とポーランド(Poland)の国境付近 ⇒ 地図