■入居前に賃貸契約をキャンセルできるか

【キャンセルできるかどうか(入居前の場合)】
まず、「入居前=まだ住んでいない」という状況でも、時期によって対応が変わります。
入居申込を出しただけ、契約書にサイン・捺印をする前の段階であれば、キャンセル(申し込みを撤回)できる可能性が高いです。 
一方で、契約書にサイン・捺印をした後や、「契約成立」と不動産会社・大家さんが判断した後であれば、たとえ入居前でも「キャンセル」ではなく「解約」という扱いになり、賃貸借契約としての責任が発生します。 

また、賃貸借契約には一般の「クーリングオフ制度」は適用されません。つまり、契約後に「やっぱり気が変わったから」という理由で手続きを取り消すことは法的保護が弱いです。 
つまり、契約前なら比較的自由、契約後なら責任が発生しやすい、ということです。

【初期費用は戻ってくるか?】
支払った初期費用(敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など)がどう扱われるかも、時期や名目により違います。以下、一般的な目安です。
<契約前の段階(申込~契約書サイン前)>
「申込金(預かり金)」として支払ったもの:契約が成立していなければ返金されるケースが多いです。 
敷金・礼金・前家賃など正式契約後に支払うべき金を契約前に支払っていた場合は、返金される可能性があるものの、支払い時期・名目・契約書記載内容次第で扱いが変わります。 

<契約成立後・入居前の段階>
契約後(=契約書にサイン等をして、契約が有効になった後)のキャンセルは、解約扱いとなるのが一般的です。 
この場合、返金されない可能性が高い費用:
・礼金(大家さんへのお礼的な支払い) 
・仲介手数料(不動産会社への報酬) 

一方で、返金される可能性が比較的あるもの(ただし確実ではない)には:
・敷金:原状回復や修繕用の預かり金という性質があるため、入居していなければ返金される可能性があります。 
・火災保険料・保証会社利用料等:これらについては保険会社・保証会社の約款次第で未経過分が返済されることがあります。 

また、契約後すぐに辞退した場合、違約金・解約料が発生するケースも多いです。
例:「次の入居者が見つかるまで家賃1ヶ月分を請求」というものなど。 

 

■まとめ

契約前ならキャンセル可能で、申込金などは返金される可能性が高い。
契約成立後(入居前含む)なら、「キャンセル」ではなく「解約」とされ、返金されない費用が多く、違約金が発生する場合もある。
初期費用の中でも、「礼金」や「仲介手数料」は返らないことが多く、「敷金」「保険料」などは返金される余地があるが、確実ではない。
 

■youtube動画の台本

会話台本(セミナー風)

賃貸契約に関する初心者向けセミナー。

【登場人物】
やまだ:素朴な疑問を持った女の子(参加者)。不動産業界はまだ慣れていない。
講 師:不動産屋で働くベテラン社員。現場経験が豊富。

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<前編:前ならキャンセルできるの?>

やまだ

先生、私この前、気に入ったお部屋を契約したんですけど……よく考えたらちょっと迷ってきちゃって。入居前ならキャンセルできますか?

 

講師

いい質問だね。

実は“いつの段階か”によって全然違うんだ。まだ“申し込み”だけの段階なら、キャンセルできる可能性が高い。でも、“契約書にサインして正式に契約成立”しているなら、もう“キャンセル”じゃなく“解約”という扱いになるんだよ。

 

やまだ

えっ、まだ入ってないのに解約なんですか?

 

講師

そう。

賃貸契約って“入居日”じゃなく“契約した日”から効力が生じる場合が多い。だから入居前でも、契約が成立していれば大家さんとの約束が発生してるんだ。ちなみに、クーリングオフ制度は基本的に賃貸契約には適用されないんだよ。

 

やまだ

そうなんですね……

じゃあ、“気が変わった”だけじゃ取り消せないんですね。

 

講師

そう。

契約成立後のキャンセルは、法律的には“借主の都合による解約”。だから、家賃1ヶ月分や違約金を請求されるケースもあるんだ。

 

やまだ

うわぁ、サインする前にもっと考えればよかったです……。

 

講師

焦らずにね。

契約前なら申し込み金も返ってくるケースが多いから、まずはどの段階まで進んでるかを確認することが大事だよ。

 

以上