山頭火の「行乞記」昭和5年ー12/10 | 安 明高 の 生 活

安 明高 の 生 活

日頃の気になること と
坂村真民・種田山頭火さんなどの作品を掲載してます

御先祖の御加護に感謝をし
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弘法大師・法然上人・親鸞聖人などの魅力を紹介してます。

【南無大師遍照金剛】 * 7

十二月十四日 晴、行程二里、万田、苦味生居、末光居。
宇佐-25
霜がまつしろにおりてゐる、

冷たいけれど晴れきつてゐる、

 

きょうは久振に苦味生さんに逢へる、

元気よく山ノ上町へ急ぐ、

坑内長屋の出入はなか/\やかましい

(苦味生さんの言のやうに、

一種の牢獄といへないことはない)、

やうやくその長屋に草鞋を脱いだが、

その本人は私を迎へるために出かけて留守だつた、

 

母堂の深切、祖母さんの言葉、

どれもうれしかつた、

句稿を書き改めてゐるうちに苦味生さん帰宅、

さつそく一杯二杯三杯とよばれながら話しつゞける、――

苦味生さんには感服する、

あゝいふ境遇であゝいふ職業で、

そしてあゝいふ純真さだ、彼と句とは一致してゐる、

私と句とが一致してゐるやうに。


入浴して散歩する、

話しても話しても話し飽かないほど、

二人は幸福であり平和であつた、

彼等に幸福と平和とがつゞくことを祈る。
夜は苦味生さんの友人末光さんのところへ案内されて

泊めていたゞいた、

 

久しぶりに、ほんたうに久しぶりに

田園のしづけさしたしさを味はつた、

農家の生活が最も好ましい生活ではあるまいか、

自から耕して自から生きる、

肉体の辛さが精神の安けさを妨げない、――

そんな事を考へながら、飲んだり話したり作つたりした。

 

・霜の道べりへもう店をひろげはじめた
 大霜、あつまつて火を焚きあげる
 つめたい眼ざめの虱を焼き殺す
・師走ゆきこの捨猫が鳴いてゐる
 よい事も教へられたよいお天気
・霧、煙、埃をつきぬける
・石地蔵尊へもパラソルさしかけてある
 のぼりくだりの道の草枯れ
 明るくて一間きり(苦味生居)
・柵をくゞつて枯野へ出た
 子供になつて馬酔木も摘みます
 夕闇のうごめくは戻る馬だつた
 八十八才の日向のからだである(苦味生さん祖母)

 

さびしいほどのしづかな一夜だつた、

緑平さんへ長い手紙を書く、清算か決算か

とにかく私の一生も終末に近づきつゝあるやうだ、

とりとめもない悩ましさで寝つかれなかつた、

暮鳥詩集を読んだりした、

彼も薄倖な、そして真実な詩人だつたが。


我儘といふことについて考へる、

私はあまり我がまゝに育つた、

そしてあまり我がまゝに生きて来た、

しかし幸にして私は破産した、そして禅門に入つた、

おかげで私はより我がまゝになることから免がれた、

少しづゝ我がまゝがとれた、

現在の私は一枚の蒲団をしみ/″\温かく感じ、

一片の沢庵切をもおいしくいたゞくのである。

 

(青空文庫作成ファイル)より

 

(続きます)

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今日も命を授けていただきありがとう (^-^)

二度とない人生

だから 今日が大事、今日が大切 

今日もいい日でありますように 【合掌】

 

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