十月十七日 曇后晴、休養、宿は同前。
昨夜は十二時がうつても寝つかれなかつた、
無理をしたゝめでもあらう、
イモシヨウチユウのたゝりでもあらう、
また、風邪気味のせいでもあらう、
腰から足に熱があつて、
倦くて痛くて苦しかつた。
朝のお汁に、昨日途上で貰つて来た唐辛を入れる、
老来と共に
辛いもの臭いもの苦がいもの渋いものが親しくなる。
昨日といへば農家の仕事を眺めてゐると、
粒々辛苦といふ言葉を感ぜずにはゐられない、
まつたく粒々辛苦だ。
身心はすぐれないけれど、むりに八時出立する、
行乞するつもりだけれど、発熱して悪感がおこつて、
とてもそれどころぢやないので、
やうやく路傍に小さい堂宇を見けて
そこの狭い板敷に寝てゐると、
近傍の子供が四五人やつて
声をかける、
見ると地面に茣蓙を敷いて、
それに横はりなさいといふ、ありがたいことだ、
私は熱に燃え悪感に慄へる身体をその上に横たへた、
うつら/\して夢ともなく現ともなく
二時間ばかり寝てゐるうちに、
どうやら足元もひよろつかず声も出さうなので、
二時間だけ行乞、
しかも最後の家で、とても我慢強い老婆にぶつかつて、
修証義と、観音経を読誦したが
読誦してゐるうちに、だん/\身心が快くなつた。
大地ひえ/″\として熱あるからだをまかす
・いづれは土くれのやすけさで土に寝る
このまゝ死んでしまふかも知れない土に寝る
熱あるからだをなが/\と伸ばす土
前の宿にひきかへして寝床につく、
水を飲んで(こゝの水はうまくてよろしい)
ゆつくりしてさへをれば、
私の健康は回復する、
果して夕方には
一番風呂にはいるだけの勇気が出て来た。
やつと酒屋で酒を見つけて一杯飲む、
おいしかつた、焼酎とはもう絶縁である。
寝てゐると、どこやらで新内を語つてゐる、
明烏らしい
あの哀調は病める旅人の愁をそゝるに十分だ。
たつた一匹の蚊で殺された
病んで寝て蠅が一匹きたゞけ
(青空文庫作成ファイル)より
(続きます)
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今日も命を授けていただきありがとう (^-^)
二度とない人生
だから 今日が大事、今日が大切
今日もいい日でありますように 【合掌】
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