時々ご飯に誘ってくれる元職場の人がいる。

この人は37歳ぐらいの中国人男性で、主夫であるため自分の好きな時だけ出勤して来て、あとはキャンプに行ったり、武術の大会に出たり、人生楽しそうな人間である。
出来れば働きたくない、暇が1番忙しい、という共通思考から仲良くなった。

そんな彼は私が辞めてからというもの、1ヶ月に1回あるかないかの頻度で
【今日はタイ料理を食べにいかない?】
といったLINEを送ってくる。
大体は暇なので、行くと返事をすると、じゃあ12時頃にと言って家の前まで迎えに来てくれる。
ご飯を食べたら、電気屋でマッサージチェアに座ったり、ドンキホーテを徘徊したりなどして、平日の昼を堪能するのだ。

先月は
【美味しい担々麺やがあるから行かない?】
とLINEが来たので、行くと返事をすると、いつも通り迎えに来てくれた。
車に乗り込むと、最近どれだけハマっているか、中国と変わらない本格的な味、ニラが効いていてウマい、と熱烈に語られたので期待が高まった。
そのうち話題は移り、「日本人は餃子で米を食べるのがおかしい!餃子で肉まんを食べているようなものだ!」と熱弁していた。
私が「満州育ちだから満州の餃子しかあんまり食べたことはないけどさ、やっぱり米がないとねぇ。」と返事をすると、
「え!?オシミサン満州育ちなの!?」と驚いていた。もちろん中華人民共和国の満州で育ったわけではない。ここで言う私の満州育ち発言は、【ぎょうざの満州】を食べて育ったよという意味である。

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そんなこんなで店に着き、担々麺が運ばれて来て、私が一口食べ、美味しい!と言うと、
「ヨかったヨ〜」と満足そうに自分も割り箸を割っていた。
そして彼も一口啜ると
「ア〜だめだ、これはだめかもしれない」
と何やらブツブツ言っている。
十分美味しいけどなァと思いつつも、日によって味が違うのかもしれない。今日はハズレか…?と様子を伺っていると、もう一口食べて
「やっぱりだめダヨ!急にキタ!」
と言って箸を置いた。

どうやら、連日食べすぎて飽きがきたらしい。
直前までどれだけ美味しいか熱弁していたくせに、注文したものが食べれないほど無理なんて変にも程がある。
「事前に飽きてきたなぁとか思わないわけ?本当に食べるまで自分の飽きに気づけなかったの?」
と質問してみるも、
「分かってたらオシミサン、担々麺食べようなんて誘わないヨ!本当に美味しいのに、、食べたいナァ〜困ったヨ〜」
と本当に悔しがっていた。

オシミサンはゆっくり食べてねと言われたけど、ゆっくりしようもない。
そういえばサハちゃんも、好きなものを一気に食べすぎて嫌いになるって昔言ってた気がするなぁ…とぼんやり思いながら麺を啜ったのである。