デトロイトメタルシティ(DMC)最新刊発売記念 『メタルってなんやねん』
最新刊が発売になったので『デトロイトメタルシティ
』(DMC)のブームを取り上げつつ ”メタル” についてちょっと語ってみたい。
ちなみにDMCとはデスメタル(悪魔崇拝系メタル)バンドを題材としているコメディ漫画なのだが、そんな絶対に一般層に受けるはずのない作品が何故か売れに売れているのである。
漫画が売れているだけならまだしも、コスパと提携してTシャツやキャップといった商品展開までされてしまっているのである。
■参考リンク
デトロイトメタルシティTシャツ
時はまさに世紀末。
これは一体全体どうしたことか。
デスメタルってのは元々が 「ギャグのようなジャンル」(禁句)なんだけども、それを漫画にしたところでそこまで売れるとは思えない。
一体DMCが売れた理由とはなんなんだろうか?
という結論を考えるよりも先に、まずは 「メタルってなんやねん?」 という初歩中の初歩の部分から考えてみたい。
導入から哀しい話になってしまうのだが、日本において実際の音楽ジャンルとしてのメタル(ヘヴィメタル)は売り上げが伸びず、希少動物扱いされている現状である。
早弾きこそ全て!
腱鞘炎が最大の敵!
ハイトーンシャウトができりゃ歌唱力なんざなくていい!
なんて酔狂なジャンルを今さらやろうとする人間など滅多にいない。
日本で売れたメタルバンドを考えてみれば分かるが、『真面目なヘヴィメタ』 でセールス的にも成功した例なんてラウドネスしかいない。
他に思いつくメタル系でそこそこ売れたバンドなんて、聖鬼魔Ⅱ(諸説あるだろうけどとりあえず…)とセックスマシンガンズ、作曲者が生粋のメタラーという事で筋肉少女帯、そしてアニメタルくらいのものなんだが、どれもこれもイロモノである。(44マグナムとかVOWWOWとかアンセムはセールス的にちょっと淋しい気がする。)
メタルが笑いにしかならないと悟るべきだという事なのか、言い方を変えれば自分達が笑いの対象だと割り切らないと食べていけないのか、日本の 『真面目メタルシーン』 はとにかく氷河期なのである。
なんたってヘヴィメタの元祖と呼ばれているオジーオズボーンですら 『メタル=笑い』 と認識している始末である。(オズボーンファミリー見れば分かる)
だがしかし、『メタル村出身者で方向性を変えて成功した人間』 となれば話は別であり、Xジャパンとかジュディアンドマリーとかイエローモンキーといった文句なしのメジャーバンドが数多く存在する。
さらに言ってしまえばBOOWYのやけにメロディアスなギターフレーズにも、実はメタル要素が多分に含まれていたのだ。(BOOWYってビートロックって言葉を使わないとすれば、実は歌ものメタルじゃねえか?)
そう、日本では 『メタル要素のある音楽』 はウケるのに、『メタルそのもの』 は決して受け入れてもらえないのである。
思い起こせば80年代後半から90年代初頭にかけて、バリバリのメタルバンドだったはずの連中が食っていけずに、「あの子が欲しいこの子が欲しい」と花いちもんめ状態で 【バンド解散→他バンドからメンバー引き抜き→新バンド結成】 を繰り返した。
ある者はBOOWYのビートロックに打ち込み音を加えたようなアルファベット4文字か5文字のビーイング系リスペクトバンドになり、ある者は渋谷系ブームに乗っかってフリッパーズギターの劣化コピーと呼ぶしかないような軟弱ポップバンドと化し、またある者はメタルのビジュアル面を曲解したかのような奇抜な風貌のビジュアルバンド(当時の呼び方で言うならお化粧バンド)と化すという、悪夢のような 『インディーズメタルバンド界の一大転職ブーム』 に陥ったのだ。
そう考えると、DMCで描かれている設定は真実とはまるで逆という事になる。
『カヒミカリィが大好きで本当は軟弱ポップスがやりたいのに、その路線では誰にも評価してもらえず、デスメタルバンドのヴォーカリストとして伝説的なカリスマと化してセールス的にも大成功してしまう主人公』
この無理のあるシナリオにはメタル業界の無念、というか怨念がこもっているように感じる。
作者がメタル好きなのかどうかは知らんが、DMCという作品から感じるのは 『メタルに夢を見てたあの頃のパッション』 である。
DMCのデスメタルを題材にしたギャグは確かに面白いし、売れてる漫画特有の勢いやパワーも感じる。
だがしかし!
オレ様がDMCから感じ取るのは切なさなのだ!
・日本においてメタルとは音楽ジャンルとしては絶滅種に等しい存在である
・ファッションの奇抜さからイロモノとしてしか存在を許されない
だから音楽事務所や食い詰めたメンバーから音楽性の変更を強要され、それを断れば外人メタルバンドの活躍を羨望の眼差しで見ながら中央線沿線あたりの小汚いアパート暮らしを続け、コンビニの深夜バイトで生活費を稼ぎ、食事は主にバイト先のコンビニの廃棄弁当。そんな貧困生活の合間に100人~200人程度の小さい箱でのライブを繰り返すという、現代日本とは思えない夢も希望もない毎日を送るしかない。
DMCにはそんなジャパニーズメタル業界の怨念が込められているのである。
DMCが爆発的に売れている理由。
それはギャグ漫画としての完成度だけではない。
過去に無念の内に死んでいったメタルバンド達の見えない力が働いているに違いないのである。
そうとでも考えないと頑固一筋にメタル道を貫こうとした連中が浮かばれないんだもの…。(合掌)
■参考リンク
デトロイトメタルシティ商品一覧
ちなみにDMCとはデスメタル(悪魔崇拝系メタル)バンドを題材としているコメディ漫画なのだが、そんな絶対に一般層に受けるはずのない作品が何故か売れに売れているのである。
漫画が売れているだけならまだしも、コスパと提携してTシャツやキャップといった商品展開までされてしまっているのである。
■参考リンク
デトロイトメタルシティTシャツ
時はまさに世紀末。
これは一体全体どうしたことか。
デスメタルってのは元々が 「ギャグのようなジャンル」(禁句)なんだけども、それを漫画にしたところでそこまで売れるとは思えない。
一体DMCが売れた理由とはなんなんだろうか?
という結論を考えるよりも先に、まずは 「メタルってなんやねん?」 という初歩中の初歩の部分から考えてみたい。
導入から哀しい話になってしまうのだが、日本において実際の音楽ジャンルとしてのメタル(ヘヴィメタル)は売り上げが伸びず、希少動物扱いされている現状である。
早弾きこそ全て!
腱鞘炎が最大の敵!
ハイトーンシャウトができりゃ歌唱力なんざなくていい!
なんて酔狂なジャンルを今さらやろうとする人間など滅多にいない。
日本で売れたメタルバンドを考えてみれば分かるが、『真面目なヘヴィメタ』 でセールス的にも成功した例なんてラウドネスしかいない。
他に思いつくメタル系でそこそこ売れたバンドなんて、聖鬼魔Ⅱ(諸説あるだろうけどとりあえず…)とセックスマシンガンズ、作曲者が生粋のメタラーという事で筋肉少女帯、そしてアニメタルくらいのものなんだが、どれもこれもイロモノである。(44マグナムとかVOWWOWとかアンセムはセールス的にちょっと淋しい気がする。)
メタルが笑いにしかならないと悟るべきだという事なのか、言い方を変えれば自分達が笑いの対象だと割り切らないと食べていけないのか、日本の 『真面目メタルシーン』 はとにかく氷河期なのである。
なんたってヘヴィメタの元祖と呼ばれているオジーオズボーンですら 『メタル=笑い』 と認識している始末である。(オズボーンファミリー見れば分かる)
だがしかし、『メタル村出身者で方向性を変えて成功した人間』 となれば話は別であり、Xジャパンとかジュディアンドマリーとかイエローモンキーといった文句なしのメジャーバンドが数多く存在する。
さらに言ってしまえばBOOWYのやけにメロディアスなギターフレーズにも、実はメタル要素が多分に含まれていたのだ。(BOOWYってビートロックって言葉を使わないとすれば、実は歌ものメタルじゃねえか?)
そう、日本では 『メタル要素のある音楽』 はウケるのに、『メタルそのもの』 は決して受け入れてもらえないのである。
思い起こせば80年代後半から90年代初頭にかけて、バリバリのメタルバンドだったはずの連中が食っていけずに、「あの子が欲しいこの子が欲しい」と花いちもんめ状態で 【バンド解散→他バンドからメンバー引き抜き→新バンド結成】 を繰り返した。
ある者はBOOWYのビートロックに打ち込み音を加えたようなアルファベット4文字か5文字のビーイング系リスペクトバンドになり、ある者は渋谷系ブームに乗っかってフリッパーズギターの劣化コピーと呼ぶしかないような軟弱ポップバンドと化し、またある者はメタルのビジュアル面を曲解したかのような奇抜な風貌のビジュアルバンド(当時の呼び方で言うならお化粧バンド)と化すという、悪夢のような 『インディーズメタルバンド界の一大転職ブーム』 に陥ったのだ。
そう考えると、DMCで描かれている設定は真実とはまるで逆という事になる。
『カヒミカリィが大好きで本当は軟弱ポップスがやりたいのに、その路線では誰にも評価してもらえず、デスメタルバンドのヴォーカリストとして伝説的なカリスマと化してセールス的にも大成功してしまう主人公』
この無理のあるシナリオにはメタル業界の無念、というか怨念がこもっているように感じる。
作者がメタル好きなのかどうかは知らんが、DMCという作品から感じるのは 『メタルに夢を見てたあの頃のパッション』 である。
DMCのデスメタルを題材にしたギャグは確かに面白いし、売れてる漫画特有の勢いやパワーも感じる。
だがしかし!
オレ様がDMCから感じ取るのは切なさなのだ!
・日本においてメタルとは音楽ジャンルとしては絶滅種に等しい存在である
・ファッションの奇抜さからイロモノとしてしか存在を許されない
だから音楽事務所や食い詰めたメンバーから音楽性の変更を強要され、それを断れば外人メタルバンドの活躍を羨望の眼差しで見ながら中央線沿線あたりの小汚いアパート暮らしを続け、コンビニの深夜バイトで生活費を稼ぎ、食事は主にバイト先のコンビニの廃棄弁当。そんな貧困生活の合間に100人~200人程度の小さい箱でのライブを繰り返すという、現代日本とは思えない夢も希望もない毎日を送るしかない。
DMCにはそんなジャパニーズメタル業界の怨念が込められているのである。
DMCが爆発的に売れている理由。
それはギャグ漫画としての完成度だけではない。
過去に無念の内に死んでいったメタルバンド達の見えない力が働いているに違いないのである。
そうとでも考えないと頑固一筋にメタル道を貫こうとした連中が浮かばれないんだもの…。(合掌)
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