大好きなキャンディ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

道にうずくまって

白い石で絵を書いていた小さな女の子に


声をかけ、

その女の子のそばで

色々と話しかける人がいた。


女の子は、ちょっとだけ顔を上げ

その人の顔をちょっとだけ見て

また、絵に夢中になっていた。


でも、すこしすると

その人の問いかけに

うん。ううんと言って

うわの空のような答えをしながら

絵を描き続けていた。


そして、その人はひとしきり話をして

帰ろうとしたとき


女の子にキャンディをあげようと言った。


女の子は、絵を書くのをやめて

目の前の大きな手に入っているキャンディを見た。


その人は、その手を女の子のそばに近づけた。


女の子は、困ってしまった。


キャンディは大好き

大好きな赤と黄色のキャンディ

欲しかった。


「もらっていいの・・・?」と

小さくなる声で聞いた。


その人は、笑顔で頷いた。


「でも、わたしなんにもしてないよ。」と言う女の子


「いいんだよ。」とその人は言う


「でも・・・」

そう言うと、女の子はポケットを探り始めた。


キャンディをもらうために

何かをあげようとしていた。


その人は、それを察して

女の子のその腕を両方から抑えた。


「いいんだよ。

 おじさんは、君にキャンディをあげたいだけなんだ。

 君にキャンディをもらってもらうと嬉しいんだよ」 

とその人は言った。


「でも・・・」と女の子が言うと


「じゃあね。たくさんお話してくれたからあげたいんだ

 それじゃだめかな?」

その人が笑顔でそういうと


女の子は少し力が抜けて

その手をその人は握り

女の子の手のひらにキャンディをのせた。


「ありがとう。君と話せて楽しかったよ。

 キャンディをあげられてとっても嬉しかった。

 本当は、大好きなんだろう?キャンディ。

 君がここにいてくれたから

 君の大好きなものをあげられた。

 本当に嬉しかったよ。ありがとう」

そう言って、その人は歩いていってしまった。


女の子は、

その人が握らせてくれたキャンディを

手のひらに乗せたまま

その人を見送っていた。


本当はとっても嬉しかった。

でも、なんだか悪いことをしてしまったような

落ち着かない感じがした。