うさぎとかめのしなりお | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

このごろ毎日のように


亀のじいさんが甲羅干しする

谷の近くの草むらにうさぎがやってきて


甲羅干しする亀のじいさんの横の

少し離れたところで寝そべってゴロゴロしている。


じいさんが

「何しにきたんじゃ」と聞くと


うさぎは

「別に~」とじいさんをちらっと見て

草の上に寝そべって


少しの時間を過ごすと

「じいさん、またな~」と行って帰っていく


はじめの頃は、亀のじいさんも

時々話しかけていたが

このごろは、何も言わずに

うさぎが来て帰っていくのを

何気なく見ていた。


あるときいつものようにやってきて

いつものように寝っ転がっていたうさぎが


「なあ、じいさん、

 みんなが、わ~って言うようなことって

 どんなことだと思う?」と空を見ながらうさぎが言った。


「なんじゃ、わ~って驚かすのか?」と亀のじいさんが聞く


「じゃなくてさ~、みんなが熱中するようなわ~だよ」と

うさぎが答える。


「なんじゃ、そういうわ~かっ・・・

 そうじゃのう、祭りやなんかはそんな感じじゃのう」


「そうそう、それそれ、そんな感じのわ~」と

うさぎが身を乗り出していう。


「なんでそんなことを聞くんじゃ?」と

亀じいさんが聞くと


「まあな」と言って

うさぎは立ち上がり帰ってしまった。


それから、当分の間うさぎは姿を見せなかった。


少ししたある日、亀じいさんがいつものように甲羅干しをしていたら


「なあ、じいさん」と突然うさぎがじいさんの上から声をかけてきた。


亀じいさんはびっくりして

甲羅の中に隠れて、転んでいきそうになった。


そんな亀じいさんを、足で止めたうさぎ。


落ち着いた亀じいさんは

「なんじゃ、びっくりさせるな。」と言いながら

うさぎの顔を見た。


うさぎが、「じいさん、俺とかけっこの競争しないか?」と言った


亀じいさんは「何を言っとる。わしが負けるに決まっておる」


その言葉にうさぎが

「そうなんだよ。そこなんだよ。

 そうみんなも思う。

 でも、じいさんが勝つんだよ」


「なんでじゃ、イカサマか?」


「イカサマじゃない。シナリオだ。

 みんなは絶対勝つことのないじいさんが勝つことで

 わ~って歓声が上がって、勇気のようなものをもらうんだ。

 ノッチり、ノッチり歩き続けるじいさん。

 そんなじいさんのをバカにして、

 俺は居眠りして、寝込んでしまって

 じいさんに負けるんだよ」

目を輝かせながら息を弾ませ話す、うさぎ。


「そんな勝敗の分かっているようなもん

 誰が興味を持つんじゃ」


「だからそれは、俺が話して回る。

 じいさんも口裏をわせておいてくれればいい。

 それとあの民が毎ち必ず通る道でやれば

 誰かの目に止まる。

 そうすれば、俺たちの競争は見てもらえる。」


「そんなにうまくいくかなの~」


「じいさん、道の端から2日であの大きな木を

 往復できるか?」


「まあ、2日あればなんとかなるじゃろう」


「じゃそうしよう。

 決行は、7日後の夜明けだ

 じゃ、約束だぞ。誰にもこの話はするなよ」


そう言ってうさぎは、帰っていった。


亀じいさんは、本当にやるのか?

そう思いながら1週間後の約束の時を迎えた。


その間に、何人ものものに

この競争のいきさつやなど聞かれ

うさぎが本当にやるつもりだということが分かった。


そして、レースが始まった。

うさぎは、約束通り先に行き

亀のじいさんの様子を見ながら

タカをくくったように大きな木の下で眠り始めた。


亀のじいさんは、レースが始まっても半信半疑だった。

でも、始めたいじょうやるしかないと

マイペースで歩いた。


歩いてる間に

少しづつ声をかけてくれるものが増えていった。

そして、うさぎが眠り始また頃には

私の勝ちを応援してくれるものが出始めた。


亀じいさんは、うさぎの言っていたことが分かりはじめた。


そして、うさぎのシナリオ通り

うさぎは負けてしまった。


その結果を見ていた皆は

快挙のように喜んでくれた。


口々に「やればできるんだよ」と言っている。


その姿を見たとき

亀じいさんはうさぎの気持ちが分かった。