その場所 | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

たくさんの椅子が並ぶ

それぞれの椅子にいろんな人が座っている。


そんな中でライトがあたっているように感じた椅子が見え

その椅子に触ると懐かしいと感じる。


ずっと以前に座っていた椅子。

そう思った。そして、自然にその椅子に手が伸びた。


その椅子は、とてもなめらかで肌触りが良くて

細かい彫刻がところどころに施されてた。


その椅子に触れた手ていつの間にか

その椅子を撫でていた。

優しく懐かしい思いでその椅子をなでる。

長い時間そうしていて座ることができなかった。

座ることが怖かった。


そして、やっとその椅子に座ってみようと思った。

こわごわとほんの一瞬浅く腰掛けてみた。

すぐ立ち上がり、

椅子を触りながら椅子の周りをぐるぐると回った。


そして、また、一瞬だけ腰掛けた。

そして、また、椅子の周りをぐるぐると回る。


そんなこと何度も何度も繰り返して

やっと椅子に座ってみよう

ゆっくりと深く腰掛けてみようと決意して

椅子に座る。


座った瞬間、ホッとした

包み込まれるような懐かしく穏やかな気持ちになった。


足を上げ抱え込むように丸くなって

その椅子の中で目をつむった


どうして、こんなに居心地のいい椅子を忘れてしまったんだろう。

今、座っている椅子は

固く冷たい。暗い隅っこの場所にある。

周りには、椅子があるけど誰も座っていない。

時折、ひどく疲れた顔をした人が座っているけど

ほんと少しの間で居なくなる。


なんで、こんないい椅子を手放してしまったんだろう?

そんなことをそんなことを思いながら

いつの間にか眠ってしまっていた。


ここが、本当に安心して眠れる場所

心からぐっすりと眠れる場所


そうここで、私は笑ったり泣いたり怒ったり

素直に自分を表現していた。


でもいつに日か、周りに座る人たちが

自分に無関心に感じられた

だれも答えてくれないように感じた。

そう思ったときから

眠りながら自分を責めるようになった。

責めながら、眠るようになった。


そんな日が続くようになって

疲れてしまって、違う椅子を探して

その椅子から離れた。


そのことを思い出した。

そして、今座っている椅子から

ずっとこの椅子を眺めていた。

この椅子が、そこにあることを確認しては

安心出来ていた。

そのことを思い出したとき目が覚めた。


そして意識がはっきりしたとき

この椅子は、私の椅子だ。

この椅子が私の座るべき椅子。

そうはっきりとわかった。


でも、まだ、この椅子にずっといることをためらっている自分がいる。

この椅子に座っている時に感じた

寂しさを思い出してしまうからだ

でも、もう少しここにいてみようと思った。