◆今年度好調の将棋棋士
◆2024年度の将棋界は当面継続すると思われた藤井聡太八冠体制が伊藤匠七段によって崩されるという波乱の幕開け。さりとて伊藤匠七段(叡王)が藤井聡太七冠に取って代わるかというと現在11勝7敗、勝率.611でトップ棋士としては平凡な成績で、年度内のタイトル戦は王座戦、竜王戦、王将戦で敗退。残るは第50期棋王戦1つだけ。棋王戦は前期の第49期で挑戦者になっているので今期はベスト4扱いで3回戦からの出場になります。棋王戦はトーナメント戦としては最高の難関で1回戦から出場すると6連勝して勝ち組の優勝者で5回戦(準決勝)、6回戦の決勝で敗れた棋士が敗者復活戦に回り、敗者復活戦の勝ち抜き者と二番勝負を行ない、勝ち組優勝者は挑戦者決定二番勝負で1勝すれば挑戦権を獲得、敗者復活戦に回った棋士は二番勝負で2連勝すれば挑戦権を獲得することになります。要するに全勝するか1敗を保った棋士が挑戦権を獲得。2敗を喫した棋士は敗退という仕組みになっています。従ってベスト4で3回戦から出場する伊藤匠叡王でも4連勝+〇か●〇で挑戦権獲得となりかなりの難関です。
◆2019年度の第45期ではデビュー初年度の本田奎四段(当時22歳)が予選の1回戦から出場して4回戦(準決勝で永瀬拓矢七段(現九段)、決勝で増田康六段(現八段)、本戦2回戦で行方尚史八段(現九段)、3回戦で佐藤天彦九段、4回戦で村山慈明七段(現八段)、準決勝で丸山忠久九段、決勝で広瀬章人竜王(八段・現九段)を破り予選から10連勝。最後の二番勝負で敗者復活戦を勝ち上がった佐々木大地五段(現七段)に●〇で挑戦権を獲得したという快挙事例があります。
◆伊藤匠叡王が棋王を獲得して二冠となったとしても8カ月以上間が空くことになるでしょうから二強鼎立状態になるには2、3年は掛かることになりましょうか?
◆さて、次に藤井聡太七冠からタイトルを奪取しそうな棋士を探してみれば間もなく始まる第72期王座戦の永瀬拓矢九段、10月に開幕となる第37期竜王戦の佐々木勇気八段の2名が決定。永瀬拓矢九段は今年度5勝4敗と好調とは言い難い成績ですが佐々木勇気八段は10勝1敗と絶好調でタイトル初挑戦で初タイトル獲得を狙える勢いです。
◆今年度の好調棋士を観ると既存のタイトル獲得経験者では絶好調と思える棋士は居らず30歳以下の若手棋士が勝率部門の上位の多くを占めています。
◆2024年度勝率部門上位者
①出口若武六段(29歳)・8勝0敗(1.000)
2019年4月23歳でプロ入り。2022年度第7期叡王戦で藤井聡太叡王に挑戦するも0-3で敗退。
②佐々木勇気八段(30歳)・10勝1敗(.909)
2010年10月16歳でプロ入りは史上6番目の若さ。2013年度第3期加古川清流戦優勝、2023年度第73回NHK杯優勝。
③狩山幹生四段(22歳)・13勝2敗(.867)
2021年10月19歳でプロ入り。
④服部慎一郎六段(25歳)・12勝2敗(.857)
2020年20歳でプロ入り。2023年度の勝率.673が最低で前3年は7割5分前後の勝率。2021年度第11期加古川清流戦優勝、2022年度第53期新人王戦優勝。
⑤近藤誠也七段(28歳)・5勝1敗(0833)
2015年10月19歳でプロ入り。
⑥梶浦宏孝七段(29歳)・14勝3敗(.824)。3敗の内1敗は順位戦での不可解な不戦敗。
2015年4月19歳でプロ入り。
⑦増田康宏(26歳)・8勝2敗(0800)
2014年10月16歳でプロ入り。藤井聡太出現により「東の天才」と言われたこともある。ムラが多く強いことは強いが
あまり目立たない存在でしたがいつの間にかA級八段に上がって今年度はA級で2連勝スタートを切るなど爆発の期待を
抱かせます。2016年度第47期新人王戦、2017年第48期新人王戦2連覇。
⑦山本博志五段(28歳)・8勝2敗(.800)
2018年10月22歳でプロ入り。
⑨岡部怜央四段(25歳)・11勝3敗(.783)
2022年4月22歳でプロ入り。
➉黒田堯之五段(27歳)・7勝2敗(0.778)
2019年4月22歳でプロ入り。
⑪高田明浩五段(22歳)・12勝4敗(.750)
2021年4月18歳でプロ入り。藤井聡太七冠、伊藤匠叡王と同学年。
⑪上野裕寿四段(21歳)・9勝3敗(.750)
⑪阿久津主税八段(42歳)・6勝2敗(.750)
⑪及川拓馬七段(37歳)・6勝2敗(.750)
◆以下
⑮八代弥七段(30歳)・8勝3敗(.727)
⑯杉本和陽五段(32歳)・13勝5敗(.722)
⑰村田顕弘六段(38歳)・7勝3敗(.700)
⑰今泉健司五段(51歳)・7勝3敗(.700)
⑰小山怜央四段(31歳)・7勝3敗(.700)
⑳斎藤慎太郎八段(31歳)・9勝4敗(.692)
⑳高野智史六段(30歳)・9勝4敗(.692)
⑳池永天志六段(31歳)・9勝4敗(.692)と続いていますが注目したいのは竜王に挑戦する「佐々木勇気八段」とソロソロ実績を残さないと埋没してしまいそうな「梶浦宏孝七段」、順位戦で連続昇級してA級八段に王手を掛けられるかという「服部慎一郎六段」、そしてC級2組を脱出すれば飛躍が期待出来そうな「岡部怜央四段」と「狩山幹生四段」、A級初参戦で勝ち越して本格化出来るかという「増田康宏八段」としておきましょう。