事件が起きた叡王戦他 ・6月20日の将棋対局結果(2024.6.21) | 東京の四季(庭園&公園)のブログ

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◆事件が起きた叡王戦・

・6月20日の将棋対局結果

 

(1)第9期叡王戦五番勝負第5局

①●藤井聡太叡王(八冠・2勝3敗)vs〇伊藤匠七段(3勝2敗)

 ※藤井聡太叡王をカド番に追い込んだ伊藤匠七段でしたが第4局で藤井叡王が踏ん張って伊藤匠七段の先手番をブレーク。決着は最終第5局に持ち込まれました。伊藤匠七段は悲願の初タイトル獲得成るか?という運命的な一戦になりますが、初タイトルなどという単純なものではなくて藤井聡太八冠の対抗馬として並び立つことが出来るかどうかの資格試験のような一戦だと私は観ております。同い年ですから両者の伸びしろが如何ほどか未知数でありますが25歳になるまでにタイトルを分け合うような状況になると両者が40歳くらいになるまで二強鼎立時代が続くことになると思われます。そうならなければ藤井一強時代が延々と続くことになりましょうか?そして3歳年下の超新星・藤本渚五段がどこまで実力を伸ばして来るかも興味深いところ。

 ※タイトル戦線の常連となり永世称号を獲得するようなトップ棋士になるためのプロ入り年齢の上限は18歳と見てよさそうで、今後18歳までにプロ入り出来そうな顔ぶれを眺めると炭崎俊毅三段(15歳・三段リーグ27位・2勝6敗)、桐山大翔三段(17歳・17位・4勝4敗)、高坂直矢三段(16歳・13位・7勝3敗)、山下数毅三段(16歳・5位・5勝3敗・次点1回)、岩村凛太朗三段(17歳・1位・4勝6敗・次点1回)といったところ。また、二段まで上がって来て年少者は祝井優希二段(15歳)1名のみのようです。現在3連勝しているようなので今年中に三段に昇段出来る可能性があります。

 ※三段では山下三段が次点を1回獲得していて現在5勝3敗ですから2回目の次点を獲得してフリークラス編入の可能性があります。しかし、フリークラス編入権を行使すると順位戦参加資格を得るために半年か1年要するので権利行使をしない例が過去有りました。一時代を築く超大物は20年から30年おきくらいに出現しているので次は藤井聡太八冠が40歳くらいになる頃に出現することになるかもしれません。

 ※さて、叡王戦。伊藤匠七段が初タイトルを獲得しても記録更新にはならないので藤井八冠が勝って4連覇、タイトル戦23連勝と記録を更新する方が記録という面から観ると価値が高そうです。更に第95期棋聖戦、第65期王位戦と防衛すれば25連勝、そして第72期王座戦を防衛すれば26連勝、八冠丸1年保持という歴史的快記録が樹立されます。将棋の神様はどちらの道に導くか楽しみです。

 ※伊藤匠七段は藤井八冠戦は2勝2敗ですが、その他の対局では3勝4敗と苦戦。調子が良いとは思えません。対する藤井八冠は8勝3敗、勝率.727と徐々に本調子を取り戻して来ている感じでこの差が出るか出ないか?

 ※振り駒の結果、藤井聡太叡王が先手番を引いて叡王戦4連覇、タイトル戦無敗の23連勝達成の可能性が高まったと感じたものです。第4局とは逆に後手番の伊藤匠七段が右玉に構える趣向。藤井聡太叡王とすれば「オレのように勝てるか?」と問いかけたくなるような展開に。藤井叡王は自信満々(?)大胆な仕掛けを見せました。75手目▲6五歩の突き出しから▽同歩と取らせて▲6六銀と歩の頭の前に差し出しました。▽同歩と銀を取らせて▲6五桂打ちの王手。▲4五に居て取られそうな桂馬と連携しての攻め。更に2筋の飛車を▲6六飛と旋回させて王手(83手目)▽6五歩の防ぎに▲同飛と飛車をも捨てようという異常な強攻。▽同玉と有難く飛車を頂くと伊藤玉は中央に孤立し、玉の背後の金銀を取られて防ぎようが無くなるという恐ろしい手。AIはこの攻めを評価して「藤井優勢」。この後も藤井叡王は攻めを繋いで優勢を拡大しましたが伊藤七段も左翼に残った金銀を活かして陣容を再構築。飛車を犠牲にして玉を囲いの中に避難させて反撃に転じジワジワと形勢を挽回して行きました。結果論的には藤井叡王がAIが再三示していた▲3四金と伊藤七段の上部を完全に抑える一手を指さなかったことが敗因となったようで、藤井叡王が攻めあぐんでいる間に飛車角に桂2枚と飛び道具だけが手駒ごまであった伊藤七段がと金を作ってヒタヒタと藤井玉に肉薄。先に1分将棋に追い込まれた藤井叡王は即詰みを狙って王手王手で迫りましたが詰みには至らず。タイトル戦23戦目にして初の敗北。年単位で続くと思われた八冠独占は254日目で終止符を打ちました。

 ※対藤井聡太戦11連敗から12戦目で初勝利を挙げたのが今次の叡王戦第2局。この1勝は正に待望の1勝であったようで「勝つ味を覚えた」伊藤七段がその後は3勝1敗と調子に乗って事件発生となりました。伊藤匠叡王としては初タイトル獲得と共に藤井聡太七冠の対抗馬としての資格を取得したという標識塔を打ち立てたという点に意義がありそうです。これで藤井聡太一強状態は多分解消となり、今後挑戦者となる棋士たちにも「チャンス有り」という意識が出るでありましょうから面白くなって来たと言えましょう。

 ※某棋士のコメントにもありましたが、藤井聡太七冠が異常な強さを見せてデビュー以来5勝1敗という驚異的な勝率で突っ走って来た中で、AIの活用効果も有って棋士全体の実力レベルが引き上げられトップ棋士の層が厚くなって来ているという状況もあり、初タイトルを獲得した伊藤匠叡王とて安閑としているヒマはありません。藤井聡太七冠との死闘に疲れると他の棋士に足元を掬われるということになりかねません。伊藤匠叡王は今年7勝6敗で対藤井聡太戦を除くと4勝4敗の五分という成績がこれを如実に物語っていると言えましょう。

 ※さて、叡王防衛に失敗した藤井聡太七冠。今後の楽しみは今年度も勝率8割を維持出来るかどうかではないでしょうか?マア、多少の好不調はあったでしょうが滅多に2連敗しない、3連敗は皆無という抜群の安定度も見せ続けて来たので大崩れはしないと思いますが今までのような無人の原野を突き進むような快進撃は観られなくなるかもしれません。

 

(2)第83期順位戦B級1組1回戦

 ※鬼の棲家の開幕戦。直ぐにA級に復帰すると思われた羽生善治九段が3期目を迎えました。若手の台頭が著しいと同時に古参の棋士も頑張っているということになりましょうが、直近5期でA級に復帰したのは稲葉陽八段1名のみ。と、いうことは1期で逆戻りした山崎隆之八段を除く9名はA級に長く定着していた強豪揃いということで、木村一基九段、久保利明九段、稲葉陽八段、三浦弘行九段、羽生善治九段、糸谷哲朗八段、佐藤康光九段、広瀬章人九段、斎藤慎太郎八段という顔ぶれ。この内、木村九段と久保九段はB級2組に落ちているので現在のB級1組は鬼の棲家どころか「ほぼA級」という大激戦地帯となっています。元A級の強豪に対する若手は近藤誠也七段、澤田真吾七段、大橋貴洸七段、大石直嗣七段(新)、高見泰地七段(新)、石井健太郎七段(新)の6名。この顔ぶれを観ると新八段誕生の可能性は極めて低いように思われます。

 ※叡王戦ショックは当分醒めやらないでしょうが将棋界の「本場所」とも言える「順位戦」が開幕して楽しみが増えました。新参の高見泰地七段はA級5期の強豪・糸谷哲朗八段を破ってデビュー戦を白星で飾りましたが、大石直嗣七段は昇級候補の近藤誠也七段に敗れてデビュー初戦黒星。もう1人の石井健太郎七段は抜け番。

②〇広瀬章人九段(1位・1勝)vs●斎藤慎太郎八段(2位・1敗)

 ※広瀬2勝⇒3勝、斎藤慎4勝。A級復帰を目指す両者が1回戦で当たってスッキリしたような勿体ないような・・・。

 

③●大石直嗣七段(11位・1敗)vs〇近藤誠也七段(3位・1勝)

 ※近藤1勝⇒2勝、大石0勝。

 

④●大橋貴洸七段(6位・1敗)vs〇澤田真吾七段(4位・1勝)

 ※大橋1勝、澤田1勝⇒2勝。

 ※大橋七段にとっては勝っておきたかったところでしょう。順位が下だけに痛い1敗。

 

⑤●佐藤康光九段(8位・1敗)vs〇羽生善治九段(4位・1勝)

 ※対戦成績では羽生九段が大きくリードしていますが最近は佐藤康光九段が圧倒していて99%勝ちという局面でミスが出て逆転という対局が多く観られます。

 ※今回は羽生九段が快勝。

 

⑥●糸谷哲朗八段(7位・1敗)vs〇高見泰地七段(12位・1勝)

 ※糸谷1勝、高見1勝⇒2勝。

 ※糸谷八段としては誤算の1敗でしょう。高見七段は大きな1勝。

 

⑦〇山崎隆之八段(10位・1勝)vs●三浦弘行九段(9位・1敗)

 ※山崎7勝⇒8勝、三浦6勝。

 

(3)第83期順位戦C級2組1回戦後半

 ※前半戦では昇級有力候補は概ね白星発進。後半戦では梶浦宏孝七段と本田奎六段に躓きが出るかどうかが注目点。

 ※実力的に昇級候補に挙げざるを得ない本田奎六段、不安が的中して初戦で躓きました。レート差225点の相手で8割方勝てる確率ですが大事な一戦で敗れるとは順位戦の怖さと言えましょうか。梶浦七段はレート差404点に躓かず順当な発進。降級ピンチの長岡六段は若手を破って貴重な1勝。安用寺七段は厳しいスタート。

⑧●高野秀行六段(46位★・1敗)vs〇梶浦宏孝七段(3位・1敗)

 

⑨●石田直裕五段(6位・1敗)vs〇佐藤紳哉七段(13位★・1勝)

 

➉〇星野良生五段(10位★・1勝)vs●本田奎六段(21位・1敗)

 

⑪〇狩山幹生四段(16位・1勝)vs●今泉健司五段(41位・1敗)

 

⑫●西川和宏六段(25位★・1敗)vs〇山本博志五段(22位・1勝)

 

⑬〇伊藤真吾六段(24位★・1勝)vs●安用寺孝功七段(48位★★・1敗)

 

⑭●井田明宏四段(27位・1敗)vs〇高橋佑二郎四段(54位・1勝)

 

⑮〇長岡裕也六段(39位★★・1勝)vs●横山友紀四段(29位★・1敗)

 

⑯〇折田祥吾五段(50位・1勝)vs●遠山雄亮六段(33位★・1敗)

 

⑰〇島朗九段(38位・1勝)vs●田村庸介七段(35位・1敗)

 

(4)第32期銀河戦Bブロック7回戦

⑱〇伊藤匠七段(先)vs●深浦康市九段

 ※意外なことに初手合わせ。

 ※勝った伊藤匠叡王は8回戦で村山慈明八段と対戦します。