商店街でも古参のビル一階にあるBAR。
ママみどり、若い頃は演歌歌手だったとか。
ママとのデュエットを楽しみに通う常連も
とにかく明るい性格とうるさいほどの世話好き。
今夜も店内から笑い声が響く。
「おい 夏の曲なんて寒み~ぞ」
「ママ いつもの」「はい 勝ちゃんの十八番ね」
「よう」でっぷりした電気屋の社長。
「たーさんいらっしゃい」「ママ土産」
「ありがとう、明日はお休みだから多恵ちゃんといただくわ」
「おい おまえら商店街の男たちの悪口会か」
「いやだわ、噂話って言ってよ」
「いつものな」「たーさん健康診断引っかかったんでしょ」
「酒飲めない”ご長寿”なんてつまらんぞ」
まわりの若い連中をからかいながらの一曲。
「ママ こいつふられたんだよ」
「ちょっと 鼻水だか涙だか ほらティッシュ。あんたの良さが
わからないなんてね~。わかるの探そう!!」
一段落 「ママこっちで飲めよ」
「もう 何年だ」「10年、この前奥さんとお墓参りしてきた」
「変ってるよな本妻と愛人が仲いいなんて」
「あの人うどん好きだったでしょ。お墓の帰りにうどん屋さんへ。
奥さん、お年かな?気弱よ。
言われたの、来年は一緒にこれるかわからない。
あなた お願いねって」
たーさんには言わなかったけど
「あの人とあちらでのんびりしたいから、あなた追いかけてこないで」・・・・・
店の灯りも静かに。あたりは野良猫の鳴き声。