ひとりしかいない。


年始、今年は実家で過ごした。

寝る部屋がなかったので、リビングに布団を敷いてもらって寝ていた。


朝まだ息子と寝ている時、母親とおばさんの声で目が覚めた。

話している内容が自分たちのことだったこととおばさんが苦手なので寝てるふりをした。


おばさん「孫は可愛くてしかたないでしょ?」


母「可愛いね」「この子はすごく可愛い」「愛想も良くて可愛い」「でもひとりしかいない」


おばさん「親に似なくてよかったね」「何言ってるの。ひとりいれば十分だよ」


ひとりしかいない。

この言葉を聞いたとき衝撃が走った。

寝ているふりをしながら悲しくなった。


何で?!ひとりしかいないなんて言うんだろう。


私は結婚して自分の子を持つのが夢だった。

でもなかなかできなくて夫婦で不妊治療を考え始め、病院に行ったりしていた。

でもうつの薬を飲んでいる人は診られない。

薬を飲まなくても大丈夫になったら来てくださいと何件か行った病院に断られていた。


子供がいないふたりだけの人生もいいんじゃない?と夫に言われたこともあった。

診てくれる病院もないし、不妊治療はやめようかというタイミングで妊娠してることが分かった。

何かいつもと違う、妊娠してる気がするって感が冴えてフライングだったけど検査したら陽性だった。


それから病院で診てもらい妊娠してることが確定した。


母には不妊治療などの話は一切していない。

言えばどこまでも知れ渡ってしまいそうで怖かった。


そういう事情も知らないのもあるのかもしれないけど、ひとりしかいないは酷すぎる。

この先何年経っても忘れない、消えない傷になった。