うわの空~第2章~
男からこぼれ落ちる涙を察したマスターは、そっとナプキンを差し
男はだまって深々とお辞儀をして受け取り、瞼を押さえた。
そして口を開いた「マスター、ありがとう、ラジオかけてくれる?
マスターはうなづき、ラジオのスイッチをいれた。
雑音混じりでDJの声がきこえてきた
「いや~俺この曲好きなんだよ~冬がきたって感じだよねぇ。
はい、次のお便りいってみよ!三重県にお住まいのペンネーム青福
ペンネーム的にはちょっと放送にのっけていいか、ね
あ、いい? そう?
じゃ青福子ちゃんのメッセージを読むね。
最近賞味期限偽装が各社で、って嘘嘘そんなことかいてないない。
あ、ディレクターがなんかいってるけどほっといて
ん?時間ないって?おいおい、青福子ちゃん泣いちゃうよ
ごめんごめん、青福子ちゃん。リクエスト曲だけかけるから
あと30秒?イントロだけでもど~ぞZOOで、懐かしいなぁ、あ
じゃいくぞぅ♪ChoChoTrain~
ごめん青福子」
あわただしいラジオは普段なら怪訝に思う男は、このときばかりは微笑んだ。
マスターはひきたてのコーヒー豆に、お湯を注いだ
~つづく~
うわの空~第1章~
男は、バーから見える12月の風景をぼんやり眺めていた。
家路をいそぐ人達は、帰る場所があるからこそ、そのはやる気持ちが、
歩幅を長くしているんだなという観察と感想を抱いてた。
そして空になったグラスをマスターに差しだし、オーダーした。
さしだしたリクエストの紙に書いてあった曲名をみたマスターは、
少し微笑んで、ジュークボックスにリクエストをいれた「それから/爆風スランプ」。
男は、めったに人前ではなかないが、このときだけは、泣いた。曲が流れている間、泣いた。
つづく