ドキュメンタリーじゃ物足りない
☆SPARK☆プロデュース セレンdipiティー公演
「アリス、オキナワ!」
作・演出:入江崇史 映像監督:谷村香織
@新宿タィニィアリス
なんと舞台と映像作品のコラボだという。しかもインプロを取り入れて作ったということだ。
映像が入る舞台作品は珍しくないけど、スライド程度のものが多いし、演出家と並んで「映像監督」が紹介されることはあまり無い。
今回の映像は立派に作品だった。芝居にもちゃんと組み入れられている。
だけど何だか腑に落ちない。これって、芝居っていうんだろうか。
失踪した夫を捜して沖縄に来た妻が、現地の人々と協力して夫の愛したホテルを建て直し、夫の死を知った後も前向きに生きていく。
舞台では、それまでの過程が淡々と描写される。南の島の雰囲気を存分に表現して、会話も気だるい。インプロを取り入れた会話は確かに自然だし、面白い掛け合いもちらほら見受けられた。あまりに自然すぎて逆に不自然だ。作品として未完成なようにさえ見えてしまう。
もしかして毎回即興だったのだろうか?どっちなのか本当に分からない。それほどに間延びした、ぎごちない印象を受けた。
暗転を挟んで、従業員の気だるい会話と、ホテルに来訪者が来たシーンが繰り返される。
来訪者はみんな沖縄に癒される。癒されて和解して和んでしまう。都会の真ん中の劇場で演じるには、あまりに純粋で美しい人達だった。
映像作品と芝居が連動しすぎていることにも違和感を覚えた。
舞台でやれない街中や沖縄の海を映像で見せてつなげていく。ということは、空白の時間が無いということだ。予想のつくものばかりなら、何も見ていたってしょうがない。
舞台と比べて映像は印象深いシーンが多かったが、それでも演劇畑の演出家なら、冒頭のシーンをカットして、映像も、夫のいない家でのアリスを見せるだけにするだろう。
せっかく役者が客席に海を見出しているのに、本物の海を見せてしまってはいけない。海の映像なんて見慣れてしまっていて、想像の海にはかなわないからだ。
ドラマ仕立てのドキュメンタリーのようで、テレビ放映のほうが面白いような気がした。やり直しも利くし、何よりご飯を食べながらでも見られる。
アリスという名前にも、特に意味は無かったようだ。預言者じみた島のおばあさんと、夢枕に立つ死んだ夫。
沖縄の美しさをひたすらに描く姿勢が、なんだかがっくりするほど俗っぽかった。