キツイ・キタナイ・キケン | おはしょり稽古

キツイ・キタナイ・キケン

ゴキブリコンビナート

「君のオリモノはレモンの匂い」

作・演出:Dr.エクアドル

@新宿タイニィアリス

丸太で組まれた足場の中心に、四角い水溜り。

オールスタンディング形式と聞いてライブハウスのような形態を想像していたが、そんなひねりの無いものではなかったようだ。ベンチ上の観客席には立っても座ってもOK、ゴキブリコンビナートの「3Kミュージカル」は正装した新郎新婦の歌声で始まった。


ハネムーンに国立公園に来た新婚夫婦は、原始人のような野蛮な男達に襲われて身ぐるみ剥がれる。

おかみに助けられて宿に逃げ帰り、ショックから立ち直った花嫁は気を取り直して初夜を始めようとする。

しかし花婿は筋金入りのロリコンだった。


観客席の頭上の丸太に猿のようによじ登って、役者は別の舞台へ移動する。宿に逃げ帰る時点で花嫁はウェディングドレスを剥がれてほぼ全裸。後半では下半分が無いスクール水着で逆さ吊りにされ、最後は男に陰部の匂いを嗅がれながら花婿の生首を抱いて歌う。なかなか切ない役回りである。


半分猿のような男たちは、集団就職で雇われた「木こり」だった。

失明した親方の元で暴走し、木が切れないのでキノコを集めて生計を立てていたが、新リーダーの不祥事で新たな争いが起こる。

後半になると役者の息切れも目立ってくるが、新リーダーの木こりの一人息子の話や被差別人種としての過去など、再現シーンが度々あるにも関わらず話の筋はつかみやすい。一つの言葉から連想ゲームのように場面や曲調が変わっていき、「歌や踊りで処理する」という技法を最大限に使っているように見受けられた。

合いの手のように入る、

「日本人の百人に二人は網膜剥離」

とか、

「ベニテングタケ、神経性の毒」「現在でも支部や新宿四谷などの地下では夜な夜なベニテングタケのパーティーが開かれているのさ」

などの豆知識が面白い。二時間歌いっぱなしで本筋を伝えきるだけでも苦しいだろうに、観客サービスを忘れない。終盤になると、

「レモンの匂いのオリモノを中心に、様々な欲望がクロスする」

と台本のコンセプトまで歌ってしまっている。そうだよな、歌っちゃえばとっても分かり易い。

舞台では放尿やあからさまな虐待が起こっているが、演出家の割り切った姿勢は大変清々しく感じられた。


目の前で人が嬲られるのを観ていると、芝居が好きということは「野次馬根性が旺盛」ってことでもあるのだなと実感した。支給されたレインコートで水しぶきから身を守りつつ、舞台をよく観たくてうろうろしてしまう。


初日ならではというか、スピーカーの音が少し大きすぎて歌詞が若干聞き取りづらかったが、中盤小さくなったので二日目以降は大丈夫だったと思う。レモンの芳香剤の匂いが充満する中で二時間たっぷり野次馬をやって、半ば酸欠状態で劇場を出た。