最寄りの総合病院までクルマで片道40分、同じく診療所まで30分、これがこの集落と病院との距離である。
従って、火急の事があり、救急車を呼んだとしても到着から搬送、病院に到着するまで2時間を超えることすらある。
この集落に限った事ではないが、過疎集落に於ける緊急医療は非常に厳しい状況に置かれているのだ。

ここで活躍するのが区長である。
あのすっとぼけたおっちゃんの叡智と果敢な行動力が集落の人々の命を何度か救ったのだ。
まず、区長は毎日各戸を回り住民の様子を確かめ、特に一人暮らしの高齢者宅には念入りに、且つ、もしもの為に固定電話のボタンを一回押せば区長の携帯に繋がるような設定にし、毎日その練習をさせている。
極めつけは区長宅にはAEDを始めとした救急セットが常備してあり、さらには必要ならば自ら病院へ急患を運ぶべく、人が横になれるようなミニバンを用意し、さらにさらに、最寄りの病院のホットラインや搬入受け入れを円滑に行う為に事前の病院との折衝、受け入れ不可であった場合の第二、第三候補の選定、救急へバトンタッチする場合の事前折衝、プランAからB.C.Dまであらゆる状況に対応できるように区長は動いている。
うーむ、言いたくはないが、イカすぜ区長。
この集落の英雄、欠かすことのできない人物、それが区長なのである。
奥様によれば、毎晩寝るときにはスクランブル発進に備えた衣装と道具を枕元に置き、これは私も知らなかったのだが、酒を飲むのは私がやって来た時だけであるそうだ。
と、すると私も状況によってはスクランブル発進をしなければならず、これは責任重大であるし、この周辺の道を知り尽くしておかねばと思う次第だ。

普段、私に鼻フックされ、私とパンスト相撲に興じ、私から頭部に落書きされているあの人は何者なのだ。
これは私のブログを通じたギャップ萌えを狙っていないか、ひょっとして知能犯か区長。

昨夜、酒の入った区長に日々の住民への奉仕について尋ねてみた

区長が言うのに
あのじいちゃん、ばあちゃん達は、小さな頃から実の兄ちゃん、姉ちゃんのように接して貰った。
でもこれは恩返しではない。
あの兄ちゃん、姉ちゃんが好きだからやるのだ、それだけだ。

書きたくないぜ、区長。カッコ良すぎるではないか。


今夜寝ている時、鼻に綿を詰めたろうかと思っていたのに…