小倉さんの小部屋 10月8日

　緒形拳さんがお亡くなりになりました。

　役者として人間としても尊敬する大きな存在でした。私が言うのもおこがましいくらい本当に大きな存在でした。まさに“役者”と言う言葉がピッタリの方でした。

　つい先日、ＴＢＳの「２時っチャオ！」で緒形さんのお話をさせていただいたので、大変驚きました。
そこでしたお話、緒形さんに大変失礼をしてしまった“ワッフル事件”。
映画「蝉しぐれ」の撮影の時、控え室で緒形さんが差し入れして下さったワッフルを、そうとは知らずに口にした私は、ついついご本人の目の前で「あれ、あんまうまくない。」と言って元に戻してしまい、和気あいあいの雰囲気を凍らせてしまった事がありました。
あの時の事がついこの間の事のように思い出されます。

　しかし、そんな事は何でもなく全てを包み込むように許して下さったとろけるようなあの笑顔。
撮影が夜中まで続くと、何十メートルも離れた所から、大きな声で「小倉～、起きてるか～。」と冗談をおっしゃって和ませて下さったあのやさしい声。
ついこの間の事のように思い出されます。

　そして、何より、ロケ先のホテルのレストランで、わざわざ緒形さんの方から私のところに来て下さって、「小倉、この間の芝居観たぞ。良かった。頑張れよ！」とかけて下さったあの言葉。あの瞬間は私の宝物です。

　緒形さん、ありがとうございました。

　ご冥福をお祈りいたします。