令和6年5月22日

自由民主党政務調査会

「こども・若者」輝く未来創造本部



「こども・若者」輝く未来創造本部においては、こども政策について、有識者及び関係団体からのヒアリングを重ねてきた。政府においては、まずは「加速化プラン」や「こどもまんなか実行計画」に基づく施策を着実に実施していくことが必要であるが、 その際、 下記の点に留意しながら政策を進めていくべきである。
 

1. 少子化・人口減少、 経済社会の動向への対応等
〇人口減少に正面から向き合い、企業や国民全体を巻き込みつつ、人口減少が進む中でどのように社会機能を維持していくのか、少子化対策とあわせて議論を深めること。

 

〇 少子化・人口減少への危機感を社会に参加するすべての方々で共有し、少子化対策の強化とあわせて、社会全体の構造や意識改革に車の両輪として取り組むこと。特に若者に対しては、若い世代の視点に徹底的に立ち、効果的な広報・意識醸成に取り組むこと。

 

〇 若者や女性が将来への希望を持てるよう、若い世代の所得の向上、雇用の安定に取り組むこと。特に、女性活躍の更なる推進の観点から、固定的性別役割分担意識の是正や仕事と育児の両立支援、職場の意識改革に取り組むこと。あわせて、女性にとって魅力的な教育の場や地方の雇用の場の創出、女性デジタル人材の育成などを進めること。

 

〇 若い世代の考え方や価値観を十分に踏まえ、官民連携協力しながら、結婚支援の充実強化を進めること。

 

〇 物価上昇や賃金上昇など経済社会の動向に適切に対応すること。

 

〇 地域間格差をできる限り縮小していくことも念頭に置きつつ、地方公共団体の取組が促進されるよう、必要な支援を行うこと。

 

2.保育・子育て関係

〇 保護者が自己肯定感を持ちながらこどもと向き合うことができ子育てに伴う喜びを実感できるよう、社会全体で支えること。

 

〇 保育士が魅力ある職種となるよう、「加速化プラン」 に基づき、民間給与動向等を踏まえた更なる処遇改善を進めるとともに、公定価格の見直しについて、処遇改善等加算の在り方を含め検討すること。あわせて、経営情報の見える化を進め、保育士の処遇改善の状況を可視化すること。
 

〇「加速化プラン」に基づき、保育人材確保等との関係を踏まえつつ、1歳児の職員配置基準の改善を早期に進めること。

 

〇 専門性の高い保育者の確保、保育士・保育所支援センターの周知も含めた保育人材の確保を進めること。その際、都心部への過度な保育人材の移動という弊害が生じないよう、都市部と地域の間の格差を埋める取組をあわせて進めること。あわせて、社会全体の働き方改革の推進を通じた保育士の働き方改革、勤務時間の改善を進めること。

 

〇 地域のニーズを踏まえ必要な保育の受け皿整備を進め、待機児童の解消を図るとともに、人口減少地域において保育機能が維持されるよう、施設の多機能化を含めその在り方を検討すること。

 

〇 災害発災直後に出勤する必要のある保護者がこどもたちを預けられるよう、主任保育士など経験を有する保育士が地域で災害時にこどもの支援にあたることができるような評価を行うこと。

 

〇 放課後児童クラブについては、「放課後児童対策パッケージ」に基づく受け皿確保に取り組むとともに、「加速化プラン」に基づき、放課後児童支援員の常勤職員配置の推進など質の向上を進めること。あわせて、ICT等を活用した業務システムの導入促進を進めること。

 

〇 子育て世帯が身近で安心して相談できる 「地域子育て相談機関」 の設置を早急に進めること。

 

〇 伴走型相談支援については、妊娠期からの切れ目ない支援を着実に実施するため、専門的知見を有する伴走者が一貫してサポー トを提供できる仕組みも含め、相談支援の効果検証をしながら検討を進めること。

 

〇 こどもの居場所づくりが地域づくりにもつながるという点を含め、「こどもの居場所づくりに関する指針」に基づき、地域の実情に応じて、行政と民間の関係者が協力してこどもの居場所づくりに取り組む体制構築を進めること。

 

〇 重症複合免疫不全症ー (SCID) ,脊髄性筋萎縮症(SMA)の2疾患を新生児マススクリーニング検査に追加し、全国の自治体で実施されることを目指し、実証事業をさらに推進すること。

 

3.多様な支援ニーズヘの対応(児童虐待防止対策、社会的養護、こどもの貧困、障害児支援関係)

 

〇 貧困や虐待などを始めとする困難な状況に置かれたこどもや、社会的養護の下で暮らすこども、障害のあるこどもや医療的ケア児など、多様な支援ニーズを有するこども・若者に対する施策の推進に当たっては、これらのこども・若者の声が聴かれにくい現状を踏まえ、当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていくこと。

 

(児童虐待防止対策)
〇 施行された改正児童福祉法に基づく施策を着実に実施するとともに、一時保護開始時の司法審査の円滑な導入を図ること。こども家庭センターにおいて、学校等との連携によりヤングケアラー等を含むこどものSOSをしっかり把握し、必要な支援を届けられる体制を整備すること。

 

〇 虐待等により家庭から孤立した状態のこども・若者が、そのニーズに合わせ、宿泊も含めた必要な支援を受けられる「こども若者シェルター」や、虐待等により困難に直面する若者支援の充実を図ること。

 

〇 児童相談所について、DXも含めた人員体制・業務体制の強化等を図るとともに、一時保護について、こどもにとって不安が大きく、ケアの困難度も高いという性質を十分に踏まえ、個別ケアの推進やこどもの権利擁護を推進すること。

 

(社会的養護)
〇 家庭養育優先原則とパーマネンシー保障の理念に基づく取組を推進するため、里親制度に関して、 社会の幅広い分野における普及啓発・理解促進を進めるとともに、里親支援センターの設置促進など里親支援の充実を図り、里親等委託率について自治体格差を改善すること。あわせて、社会的養護を必要とするこどもが様々な支援策の中から適切な支援を受けられるよう、「都道府県社会的養育推進計画」の策定の支援に取り組むこと。

 

〇 社会的養護関係施設について小規模化・地域分散化を進めつつ、入所中のこどもの育ちや社会的養護経験者(いわゆるケアリ ーバー)の自立を支える観点から、施設の養育機能の向上や環境改善など社会的養護を必要とするこどもたちへの支援体制の整備を図ること。また、施設がその機能及び専門性を発揮できるよう、処遇改善も含めた人材の確保を進めること。

 

〇 社会的養護経験者や虐待経験がありながらもこれまで公的支援につながらなかった者等への自立支援や、家庭生活に困難を抱える特定妊婦や出産後の母子等に対する支援を進めること。

 

(こどもの貧困の解消・ひとり親支援)
〇 こどもの健やかな成長にとって重要な体験活動や学びの機会が、貧困によって奪われることのないよう、こども食堂などの生活支援や学習支援が、貧困で厳しい状況にあるこどもたちに確実に届くよう支援を強化するとともに、体験・遊びの機会を提供する居場所を確保し、支援が必要なこどもを早期に発見し、適切な支援につなげること。

 

〇 今般の民法改正も踏まえ離婚前後親支援事業など養育費の支払確保と安全・安心な親子の交流を推進するとともに、子育て支援や就業支援などひとり親に対する支援を総合的に推進すること。

 

〇 児童扶養手当については、経済社会の動向を踏まえ、加速化プランによる拡充の検証を行った上で、更なる見直しを検討すること。


(障害児支援)
〇 地域の障害児の支援体制の強化・インクルージョン推進や、家族支援の充実、障害児支援における人材育成のための研修体系の構築を進めること。

 

〇 重症心身障害児や医療的ケア児を始めとした全ての障害児について、保健、医療、福祉、保育、教育、雇用等の関係者が連携し、早期から切れ目なくこどもの育ちを支えるとともに、どこに住んでいても必要な支援が受けられるよう、環境や体制を整備すること。