本年より環境委員会の理事をつとめることになりました。今年の通常国会には例年よりも多い3本の法案が提出されています。本日、3本目の法案を衆議院環境委員会で採決することができました。そこで、今回は3本の法案の概要を紹介したいと思います。

 下記のとおり、一本目の(再資源化に関する)法案は「経済安全保障」の観点からも重要です。例えば、欧州委員会で、自動車の再生材使用率25%とするELV(廃自動車)規則案が成立すれば、将来的に日本国内で約25万トン程度の安定した品質の自動車向けプラスチック再生材の供給が必要になるとの試算もあり、国際社会では、様々な製造分野において再生材の囲い込み競争が既に始まっています。こうした中、今回の法律と予算措置により、再生材を必要とする大規模製造業と中小企業を中心とする産業廃棄物処理業との間の連携を強力に促していきます。

 一本目は「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」です。資源循環は、カーボンニュートラル(我が国の排出量の約36%を占める分野の削減に貢献可能)のみならず、経済安全保障(資源の海外流出防止)や地方創生など社会的課題の解決に貢献でき、あらゆる分野で実現する必要があります。また、欧州を中心に世界では、再生材の利用を求める動きが拡大しており、対応が遅れれば成長機会を逸失する可能性があります。我が国としても、再生材の質と量の確保を通じて資源循環の産業競争力(2030年までに80兆円以上の市場規模を目指します)を強化することが重要となります。このような状況を踏まえ、資源循環を進めていくため、製造側が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるよう、再資源化の取組を高度化し、資源循環産業の発展を目指す法案となっています。この法案では、脱炭素化と再生資源の質と量の確保等の資源循環の取組を一体的に促進するため、基本方針の策定、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施の状況の報告及び公表、再資源化事業等の高度化に係る認定制度の創設等の措置を講じます。

 二本目は「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案」です。令和4年12月に新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。我が国も生物多様性国家戦略を改定し、2030年までの「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現と、このために陸と海の30%以上を保全する「30by30」の目標を掲げました。この達成には、国立公園等の保護地域の拡張に加え、里地里山、企業緑地や都市の緑地等の身近な自然など、OECM(保護地域以外で生物の多様性の保全に資する地域)の設定促進が必要です。また、企業経営においても、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の流れもあいまって、生物の多様性や自然資本の重要性が高まっています。こうした中、本法案は「ネイチャーポジティブ」(自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとること)の実現に向け、企業等による地域における生物多様性の増進のための活動を促進するため、主務大臣による基本方針の策定、当該活動に係る計画の認定制度の創設と、認定を受けた活動に係る手続きのワンストップ化・規制の特例等の措置等を講じます。

 三本目は「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」です。本法案はパリ協定に基づく我が国の目標(NDC)の確実な達成に向けて国内外で地球温暖化対策を加速するため、①二国間クレジット制度(JCM)の着実な実施を確保するための体制強化、②地域共生型再エネの導入促進に向けた地域脱炭素化促進事業制度の拡充等の措置を講じるものです。①については、パートナー国の急増やJCM(途上国等への技術等の普及等を通じて実現した排出削減・吸収量をNDCの達成に活用する制度)による排出削減・吸収量の目標に向けた今後の更なる拡大のため、実施体制の強化が急務となっていることから、JCMクレジットの発行、口座簿の管理等に関する主務大臣の事務を規定する、その事務を指定法人(指定実施機関)に委任できる規定を整備するなどします。②については、地域共生型再エネの導入促進のため、再エネ促進区域の設定等の加速化に向けた制度の拡充が必要となっていることから、再エネ促進区域等を都道府県及び市町村が共同して定めることができることとし、複数市町村にわたる地域脱炭素化促進事業計画の認定を都道府県が行うこととするほか、許認可手続きのワンストップ化特例の対象となる手続きを追加するなどします。

 上記の3法案は、資源循環社会の形成、生物多様性の実現、気候変動の防止と目的は異なるものの、いずれも重要な課題の解決を促進するものとなっています。国会も残り1か月となりましたが、3本案の成立に万全を期します。