本会議や委員会が開催されないGW期間中を利用し5泊9日(機中3泊)で豪州(シドニー、キャンベラ)と米国(ワシントンD.C.)を訪問し、現地関係者と安全保障(特に経済安全保障やサイバーセキュリティ)について意見交換を行いました。
 念頭にあるのは、中国です。中国は軍事予算を3年連続で7%以上も増やし、今や日本の防衛予算の4.4倍に達し、その軍事力は西太平洋に展開する米軍を含めても我々を上回ると言われています。その中国にいかに抑止を働かせ、日本及びアジアの平和と安定を守っていくのか、米・豪関係者の懸念は我が国と同様に非常に高く感じました。
 米国では駐日大使を務めたハガティ氏をはじめとする上下両院議員、シンクタンクや民間企業の方々と面談を重ね、豪州ではオニール内務・サイバーセキュリティ担当大臣、ファレル貿易・観光担当大臣、ボーエン気候変動・エネルギー担当大臣はじめ政府関係者、ケネディ駐豪米国大使、シンクタンクや民間企業の方々と意見交換を行いました。その全てで、我が国が、一昨年末に国家安全保障戦略等を改訂し、その実施に着実に努めていること、二国間関係及びクアッド(日米豪印)等の多国間関係を強化してきたこと、先般の首脳会談でフィリピンを含めた新たな多国間関係の構築を打ち出したこと、経済安全保障においては経済安全保障推進法や現在参議院で審議中のセキュリティ・クリアランス法案などの法整備を進めていることなどへの賛意と感謝が示されました。
 他方で、サイバーセキュリティについては、米豪両国において日本の課題が指摘されました。日本でもサイバーセキュリティ関係の予算を増やし、警察や防衛省などで専門チームを立ち上げ、体制を強化してきました。加えて、重要インフラを担う民間企業も含む、NISCを中心とした横断的な体制の構築や、憲法上の制約(通信の秘密)に配意しつつアクティブ・サイバーディフェンスを可能とする法整備を検討しています。詳細には言及しませんが、米豪の取り組みは日本にとって参考になるものが多くあるように思います。
 なお、ワシントンD.C.は今年11月に控えた米国大統領選の話題でもちきりでした。バイデン大統領、トランプ前大統領、どちらに転ぶか分からないほど接戦のようです。そうした中で日本の国益を守るためには、両陣営の関係者、民主党・共和党両党の関係者、及び同盟国の関係者と常日頃より意思疎通を行い、どちらの政権になっても対日・対アジア政策が変わらない(更に強化されていく)ことが重要です。もちろん政府間でこうした努力を日々続けているわけですが、(今回面談した人達が訪日した際も我々は対応することになりますので)議員外交で輻輳的に〝顔の見える〟関係を築いていくことの重要性を実感したところです。
 最後に、訪米・訪豪の機会をくださったオーストラリア政府、米国笹川平和財団及び同僚議員の皆様、またGWに様々な行事がある中で地元をあけることをご容赦いただいた方々に心から感謝申し上げたいと思います。
(※)経済安全保障について
近年、経済安全保障という考え方が注目を集めています。我が国でも一昨年、経済安全保障推進法を成立させ、本年も機微情報に外国勢力の影響下にある人がアクセスできないようにするセキュリティ・クリアランス制度を国会で審議しています(現在、衆院を通過)。
今や経済と安全保障は切り離せなくなっています。例えば、我々の日々の生活は半導体がなければ成立しえない状況になっていますが、その半導体のサプライチェーンの重要な部分が我が国と価値観を異にする国に全て握られ、その国の一存により供給を止められてしまえば、我が国はその国の言いなりにならざるをえません。こうした観点から、我が国と有志国との間で特定物資を確保し、先端的な重要技術を保護し、特定インフラを守る取り組みを進めています。その重要なパートナー国が先端技術を有するアメリカと資源輸出国であるオーストラリアになります。
 今回の訪米でも、軍事技術にも使われる先端半導体に関する有志国の輸出規制や、中国による(スマホや自動車等に使用される)レガシー半導体の過剰生産(による市場の席巻)などが議論されました。有志国と連携し、中国との関係を絶ってしまうデカップリングではなく、有志国と連携し、経済交流は維持しながらも、あらゆる事態を想定して国民生活が危機に陥ることのないよう手当していくデリスキングを目指し、力を尽くしていきます。