来年度の税制改正の議論が始まりました。私も、2年ぶりに自民党税制調査会の幹事として審議に加わります。

 今回の議論の焦点のひとつが、デフレ克服のための税制の在り方です。言うまでもなく、日本経済は長引くデフレに苦しんできました。デフレ下では、販売・サービス価格が下がり続ける一方で実質金利や賃金は高止まるため、企業は資金を借りて事業を拡大させるよりも経費を切り詰めて利益を出し、その利益を内部留保にまわしてきました。経費を切り詰める一環として、人件費抑制のため非正規が増え平均賃金も伸び悩みました。その結果、個人消費も冷え込み、更なる低価格化が進んでいく悪循環が生じました。

 こうした悪循環を順回転に戻すため、足もとの物価高に対しては住民税非課税世帯への7万円給付やガソリン補助金の継続などの対策を講じつつ、この先マイルドな物価上昇を許容できるだけの持続的な所得向上を実現していくことが求められています。上記観点から、今回の税制改正において①賃上げ税制の強化、②中堅企業への支援税制、③GX・戦略物資の投資促進税制などが検討されています。

 賃上げ税制は「成長と分配の好循環実現」のため2年前に強化されました。以来、多くの企業がこの税制を活用し賃上げを実施してきました。来年度は人への投資を更に促すべく、教育訓練費を増やした企業に対する上乗せ減税等が検討されています。

   中堅企業の支援も重要です。中堅企業はわが国で雇用を増やし賃上げに貢献している企業群であるにもかかわらず、中小企業と大企業の狭間で中堅企業に適した支援メニューが不足しておりました。補正予算に経済対策と併せて税制による支援も検討されています。

 加えて、これからの勝ち筋に日本の企業が投資し、新たな分野で雇用を拡大していくことも必要です。昨年のスタートアップ促進税制の充実強化に続き、半導体や蓄電池などの戦略物資に関して、初期投資に加え運営コストについてもインセンティブを付与する税制を検討しています。

 上記の税制を通じて企業が雇用や給与を増やすことで、デフレを克服しつつ物価高が国民生活に与える影響を抑えられるよう、税制調査会で議論していきます。所得減税については様々なご批判があるのも承知しておりますが、この減税が実現すれば更なる賃上げと相まって可処分所得を増やしデフレ克服の後押しとなるのは間違いありません。

   今年の税制調査会では様々な税の見直しが俎上に上がっています。税の議論はどうしても「減税」か「増税」かに関心が集まりがちですが、経済社会情勢が変わる中で税制をいかに公平かつ公正なものにしていくか、という視点も重要です。社会の変化を反映させるだけでなく、社会があるべき姿に向かう一助となる税制に近づけられるよう、来月の来年度税制大綱に向けてしっかり議論していきます。