昨日、自見はなこ議員の紹介で、木原誠二代議士、牧原秀樹代議士、牧島かれん代議士と共に、スズキトモ早稲田大学教授から付加価値計算書(DS:Distribution Statement)に基づく経営について伺いました。オックスフォードのビジネススクールの教官もされていたとのこと。直接の接点はありませんが、親近感を感じます。
 スズキ教授のご主張は日本経済の問題点の核心に迫るものでした。わが国の上場企業は配当金と自社株買いを増やし続けて今は世界でも最高水準になっており、結果として、人件費や研究開発費が割を食っているとのこと。その中で、付加価値計算書(DS)とは、先に配当金の水準を定めることで人件費や研究開発費に充てていくことを財務諸表上で表明するもの。スズキ教授のゼミ生がDS導入のシミュレーションを行ったところ、人件費を含む福利厚生費や研究開発費が増加し、社員のモチベーションも上がり、それを好感した投資家により株価も上昇したそうです。
 ファイナンス理論によれば、投資家の判断が合理的であれば、その企業に成長機会があれば再投資に回せば企業価値が増加するため、投資家は配当金が低くても納得し、反対に成長機会がなければ、配当金という形で投資家に還元するか、自社株買いでROEを向上させることを求めます。ですので、成熟期にある日本経済において、おおよそ日本企業は成長機会を得られなかったため、配当金や自社株買いによって投資家を惹きつけてきたと説明できなくもありません。中長期的な視点に立ち、それぞれの企業が投資家との対話の中で合理的な経営判断が可能となるよう、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが組み立てられてきました。
 それにもかかわらず、スズキ教授のシュミレーションが正しいとすれば、実は現在の配当金の水準が過大で人材投資や研究開発投資等は過少となっている可能性が考えられます。すなわち、投資家が短期主義に走って配当金の増加や自社株買いを求め、経営者も本当は投資に回したいものの株主のプレッシャーに抗えず高額な配当金を支払い続けている、との推論です。であれば、現行制度の失敗を是正するために、付加価値計算書の導入や(これもスズキ教授が主張されていた)四半期開示も選択肢に入るのではないかとも思います。
 折しも、日本のZ世代(※)の6割が「所得の分配に不平等を感じる」との新聞報道がありました(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC13CS80T10C21A7000000/
)。スズキ教授のゼミの大学生達も、DS経営を実践する企業であれば喜んで働きたいと言っているそうです。従業員を大切にする持続可能な資本主義をどうすれば制度上構築できるかを考える上で、大変刺激になりました。

(※) Z世代・・・1996年から2012年に生まれた世代。この「Z世代」の特徴として下記があげられる。
・お金やキャリアについて保守的な考えを持つ
・人種や性別にリベラルで自然体を好む
・娯楽や経験に多くのお金を使う
・場の意見に同調しやすい傾向がある
・SNSの投稿を目的に行動することがある
・ブランドよりも自分らしさを大切にする