皆さんGWはいかがお過ごしでしたでしょうか。私は感染対策に気をつけながら地元の事業者等から話を伺いつつ、夜は自宅で何本か映画を鑑賞しましたが、その中で「マネーショート」という映画が印象に残りました。
 「マネーショート」は、リーマンショック前に住宅ローン市場のバブルを見抜いた投資家達がMBS(住宅担保証券)の下落に賭ける(CDSと呼ばれるショートを購入する)映画です。もう6年前の映画ですが、リーマンショックの本質を的確に捉えた内容だと感じました。
 印象的な場面が、普通に考えればおかしいと思える市場の動き(住宅ローンの延滞率は右肩上がりなのにそれを担保としている証券は値上がりが続いている等)を、米国の超エリートであるはずのウォール街の金融関係者が誰もおかしいと思わなくなっているところです。ノーベル経済学賞を受賞する前のリチャード・セイラー氏が、その背景を説明しているのも見どころのひとつです。
 また、金融関係者の狂騒の結果、しわ寄せを受けるのは彼らでなく真面目に働いてきた普通の人達であるとのメッセージも劇中で強調されていました。住宅ローン市場が崩壊するとの賭けに成功しそうになり喜ぶ若手の投資家に対し、彼らのメンターである元投資家が「お前たちが儲けるということは、住む場所や仕事を失う人が大勢出るということだ」と叱ります。
 このほか、同業他社に仕事をとられることを気にして審査をせずに高い格付けを与えてしまう格付け機関や、民間金融機関に好条件で再就職することに熱心で彼らに対する規制を厳しくするそぶりを見せない金融当局者など、リーマンショック後に問題とされた点を皮肉っぽく表現した場面も随所に登場します。
 そして、映画の結びは「銀行や証券会社は(リーマンショックの発端となった)サブプライムローンに類似した商品を再び売り出そうとしている」です。たしかにリーマンショック後に規制は大幅に見直されました。しかしながら、コロナ禍で成長率が低迷する中で世界各国が大規模な財政出動と金融緩和に踏みきっており、金融システムに大きな歪みが蓄積されている可能性は少なくありません。こうした中で、次なる危機を防ぐためには、この映画が示唆する通り、皆が当然にこのまま続くと思っていることこそ疑うべきであること、そして、それが持続可能でなくなった時に最も被害を受けるのは社会的に弱い立場であることを国会議員のひとりとして肝に銘じていかねばなりません。そのことを強く感じながら、映画を見終えました。