(本稿は2018年元旦の小倉將信の挨拶を書き起こしたものです)
皆さま、あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。
年頭にあたりまして、昨年私が仕事でお会いした2人の「隊員」についてお話しします。
ひとりは、セネガルの元青年海外協力隊員の澤田さんです。澤田さんはセネガルで働いた後いったん日本に戻ったものの、「アフリカで働きたい」との情熱を抑えきれずケニアのナイバシャという場所でキオスクを12カ所経営されています。澤田さんはケニアに無いものを二つ持ち込みました。ひとつは値札です。ケニアでは店主の言い値で値段が決まるため、利用者は安定して日用品を購入することができませんでした。まず澤田さんは商品の価格を透明にしました。もうひとつは体重計と血圧計です。ケニアの人は日常自分の健康をチェックする習慣がありません。買い物ついでに体重と血圧を測ってもらうことで、ケニアの人に健康意識を植え付けました。このいずれも、ケニアの社会にとって大事なものではありますが、完全な慈善事業ではありません。値段を事前に決めることでいくらの物がいつどこで誰に売れたのかデータをとることが可能となりました。また、ケニアの人の体重と血圧もこれまで無かった重要なデータです。このデータを国内外の企業や機関に利活用してもらうことで新たなビジネスも可能にしました。華奢な雰囲気のある女性の澤田さんは20代でありながら、見知らぬ土地で逞しく事業を開拓しています。
もうひとりは、岡山県真庭市の地域おこし協力隊員の姜さんです。ソウル生まれ、イギリスの大学を出た姜さんは真庭市が気に入り地域おこし協力隊員として活動しています。姜さんは真庭市の名産品の白菜と梨に目を付けました。規格外品として捨てられていた白菜と梨を使って、地元の婦人達とキムチを作ることにしました。これが〝世界一〟のキムチとして本場韓国でも評価されるようになりました。今は、クラウドファンディングによりインターナショナル・ハウスを作り、外国人に日本の田舎の良さを知ってもらうとともに、真庭にまた新たなイノベーションの芽をもたらすべく奮闘しています。
いずれも感じるのが「個」の力です。昨年末のテレビ番組でマクドナルドのサラ・カサノバ社長が取り上げられていました。マクドナルドの業績をV字回復させたカサノバ社長が掲げたスローガンは「Power of ones」です。「Power of all」ではありません。ひとりひとりの「個」の力が結集されて初めて組織の力となるという意味だと理解しています。
政府はいま「人づくり革命」に着手しています。教育・保育の予算をいくら確保するか、どこまで教育費を無償化するか、それによって進学率がどの程度あがるかなど、全体の議論がなされていますが、同様に重要なのが教育の質を高めAIにもIoTにもロボットにも代替されない澤田さんや姜さんのような強烈な「個」を如何に作っていけるのか、という点も確りと議論して参りたいと思います。
本年の皆様方の益々の発展を祈念いたしまして結びの挨拶とさせて頂きます。