本年7月中旬、アフリカのケニアへ視察に行って参りました。NGOの日本リザルツが現地で実施しているスナノミや結核の撲滅事業に参加するためです。このほか、オルカリアの地熱発電所、ティカの高次機能病院、ゴミ処理施設などの日本政府が支援している施設や、AfricaScan社のキヨスク、LIXIL社の無水トイレ・超節水トイレなどの日本企業による社会事業も見学し、現地大使館やJICA事務所等のご協力により短期間でしたが充実した視察を行うことが出来ました。

個別の視察の模様については次の投稿でご紹介しますが、本稿ではケニア視察を通じて感じた事をまとめます。

 

1. アフリカの時代はやってくるのか

アジアの経済成長が世界を牽引してきた時代に続き、アフリカの時代が到来すると言われてきましたが、80年代の資源ブームが去って後、経済は長く停滞しました。未だにアフリカ諸国はクーデターや紛争、感染症や貧困に苦しむ国も数多く存在します。アフリカ発展の障害になっているのが政府のガバナンスです。資源等の輸出で外貨収入を得られても、政府がそれを設備投資や人的投資に回すことをせず、特権階級の不正蓄財や人気取りのバラマキ、果ては軍事物資の購入に充ててきたことから、アフリカは何時まで経っても産業の高度化を実現できずにいました。この点、奇跡の成長を遂げたアジアとは対照的と言われています。

では現在のアフリカはどうでしょうか。アフリカ歴の長い日本人の方に伺うと、政府のガバナンスは以前と比べると今はだいぶ改善したようです(それでも問題は多数抱えているようですが)。もとよりアフリカには広大な大地と豊富な労働力があり、経済成長のポテンシャルは高い地域です。加えて、昨夏のTICAD VI(第6回アフリカ開発会議)がケニアの首都ナイロビで開催され、安倍総理とともに100社を超える日本企業の経営者がアフリカを訪れたことにより、日本企業のアフリカ進出も順調に増えていると聞きます。ケニア第二の都市モンバサでは日本政府の支援により港湾が整備され、経済特区(SEZ)にも指定されるそうです。東アジアの物流拠点として期待されています。これからのアフリカは日本の経済発展にとっての重要なパートナーになり得ると肌身に感じました。

 

2. 民間の力を活かしたアフリカ支援

ケニアで出会ったのは、たくましく新ビジネスを切り拓く日本のビジネスパーソン達です。AfricaScanの福吉潤CEOは澤田霞ケニア支社長とタッグを組み、ケニアで12店舗のキヨスクを運営しています。商品に値札を付けることで、言い値で売買していたケニアの商習慣に風穴を開けようとしています。更に、ケニアで健康意識が芽生えていない点に着目し、健康診断フェアをキヨスクで開催し集客しています。LIXILの山上遊さんはケニアの主力輸出製品である切り花や野菜の堆肥に使える無水トイレの普及を目指しています。同社の北村総謁さんは水供給の安定しないスラム街で超節水トイレの普及を狙っています。このほか、今回お会いできませんでしたが、ケニアの農村で玉ねぎの裁定取引をして儲けている20代の若者もいるようです。

共通しているのは、アフリカの富裕層を相手にビジネスをしようとしているのではなく、低・中所得のボリューム層を対象に事業を成り立たせようとしている点です。従来より、人口は多いものの世帯ごとの所得が少ない低・中所得層を相手に日本企業は十分に収益を上げられないと思われてきました。それと同時に、上記の事業は、ビジネスと貧困や健康などの社会問題の解決を両立させようとしている点も共通しています。これまで社会問題の解決といえば、赤字前提の慈善事業が大半でした。従来の観念を覆す民間事業者の取り組みの重要性と可能性を実感した今回の視察でした。

 

3. 保健衛生分野におけるアフリカ支援

生活が豊かになりつつあるアフリカも、保健衛生の観念はまだまだ遅れています。医療技術者、医療器材、薬品の不足も去ることながら、靴を履かずにスナノミに罹患する、ゴミが十分に回収されずにコレラが流行する、医療知識が十分でないため結核やHIVに感染する、こうしたケースが多いことも知らされました。

アフリカの保健医療の水準を向上させようと日本が主導してユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の取り組みが進展しています。また、「アフリカのきれいな街プラットフォーム」も2017年4月にスタートしました。保健医療や廃棄物処理等は日本が極めて優れている分野でもあります。道路や橋の建設といった従来型のプロジェクトだけでなく、こうした新しい分野における日本の貢献の可能性も感じました。