先週、銀行法の一部改正案が閣議決定されました。改正法案は、フィンテック企業を「電子決済等代行業者」として登録制にし、当該業者に対して金融機関はAPIを原則公開するといった内容です。銀行のAPIが公開されれば、スマホのアプリなど単一のプラットフォームで、出入金、資産管理や家計簿作成など様々な金融サービスを受けられるようになり利用者の利便性が飛躍的に高まります。また、これまで利用者はフィンテック企業にIDやパスワードを預けてサービスを受けていましたが、銀行のAPIが公開されれば、フィンテック企業を通さずにアプリから直接銀行口座にアクセスすることが可能となるため、セキュリティーも強化されます。
しかし、法案審査を行う自民党の財務金融部会では、出席議員から当該法案に対する異論が珍しく(?)あがり、3回にわたって部会が開催された末に最終的に法案が承認をされました。主な異論は、①「電子決済等代行業者」に登録する事の負担が大き過ぎてかえってベンチャー企業の参入を妨げる、②EUは金融機関のAPI公開を義務付けている、本法の努力義務規定ではAPI公開が進まないといったものです。これに対して、金融庁からは、①「電子決済等代行業者」に対する規定はあらゆる金融規制の中で最も緩いものであり、イノベーションを阻害しない、②金融機関が不合理にAPI公開先を選別することは許さないとの回答があり、これからの運用においてこれらの回答が確りと実行に移されることを条件に財務金融部会では法案の了承がなされました。
そもそも最も厳格な銀行法にフィンテック会社を規定するのがオカシイとの本質的な意見も出ました。たしかに、今の金融業界では、アンバンドリングが進んでいます。昔のように、銀行が融資や決済サービスを独占していた時代は終わりました。ITの発展に伴い、銀行でなくとも、融資や決済などの金融サービスを提供できるようになりました。しかし、現行の法体系は、銀行法、金融証券取引法、保険業法など相変わらず業種ごとに規制されています。結果として、ベンチャー企業を既存の法体系に組み込もうとすれば、他の事業と比べて規制が厳しすぎると文句がつく一方で、既存の企業からも規制環境の緩いベンチャー企業と同じ土俵で競争させられていることの不満が出ています。金融のイノベーションを真に促し、一方で既存の企業とベンチャー企業がイコールフッティングの環境で競争してもらうためには、現行の業態に着目した法規制でなく、サービスの中身に着目した法規制に改めるべき時が来ているのかもしれません。