予算委員会では三日間にわたる来年度本予算の基本的質疑がありました。その中で、野党から最も質問の多かった話題の一つがテロ等準備罪についてです。来年度の予算とは直接関係のない、かつ未だに法案も提出されていない(提出されれば当然法務委員会で審議されることになる)テロ等準備罪の質問に予算委員会で何故ここまで時間を割くのか不思議に思いますが、テロ等準備罪が何故必要なのか、また、これまで3回国会に提出された共謀罪とどこが違うのか紹介したいと思います。
まずはテロ等準備罪の必要性についてです。大きく分けて2つあります。
ひとつは、国際条約に参加するためです。国際組織犯罪防止条約(TOC条約)が採決されたのは2000年ですが、国内担保法の不備が理由で日本は未だ批准できていません。民主党は「共謀罪」を成立させずにTOC条約に批准することを公約に掲げて政権の座に着きましたが、3年強の民主党政権の間、遂にTOC条約を批准することはできませんでした。そうこうしている間、187ヶ国がTOC条約に批准し、未参加は日本を含む11か国のみとなりました。これを放置してしまえば、テロを含む国際組織犯罪に対する日本の見識が国際社会から疑われるだけでなく、国際組織犯罪に関する情報が締約国会議などを通じて日本に入ってこなくなる恐れもあります。
ふたつ目は、国内におけるテロを未然に防止する目的です。政府はテロ等準備罪が無ければ検挙できない例として別表の3つのケースを挙げています。アメリカ同時多発テロやオウム真理教による地下鉄サリン事件を想起する事例ですが、いずれも既存の法律では取り締ることができない可能性があります。過去の裁判例のなかでも、実際に起こった事例として、破壊活動防止法上の政治目的のための殺人予備罪と騒擾予備罪の成否が問題となった事例ですが、国会を急襲して占拠することを当面の目標としていた被告人らがライフル銃二丁や空気銃一丁、また防毒マスク百個、ジープ、トラック、こういった武器、装備が計画実現のため利用可能な状態にあった、こういう事実を認定したとしても今の予備罪には当たらない、つまりは検挙して裁くことはできないとされています。
一方で、過去3度もTOC条約への参加を目的とした「共謀罪」が廃案になった事実も重く受け止めなければなりません。共謀罪ができれば「上司の悪口を言っただけで逮捕される」といった間違った認識が広まったことも、共謀罪への理解が進まなかった要因の一つでもあります。未だに新聞では国民を不安がらせるような報道がなされていますが(別表参照)、こういった事例もテロ等準備罪には全く当たらないと国会答弁で刑事局長が明確に否定しています。そして今回のテロ等準備罪は共謀罪と異なり、合意に加えて〝準備行為″が無ければ逮捕できないと要件を絞り込んでいます。さらに、捜査の行き過ぎが生じないよう犯罪の主体をテロ集団や暴力団などの組織的な犯罪集団に限定しています。普通のサラリーマンや一般市民は当然対象になりえません。
現在は法案の策定作業を進めていますが、テロ等準備罪にあたる項目をさらに絞り込んでいると聞いています。2020年東京オリンピックパラリンピック開催を控えて、日本がテロに巻き込まれることは絶対にあってはなりません。テロ等の組織犯罪をしっかりと未然に防止しながら、テロ等準備罪の創設に一般市民の生活が脅かされるといった疑念を微塵も抱かれないよう丁寧に議論して参ります。
なお、予算委員会への出席に加えて、ジョンガマー元英環境大臣らとの面談や、全日本不動産政治連盟からの取材対応などを行いました。