本日は、年金制度改革法案の採決がありました。その前に、丹羽厚生労働委員長の解任決議、塩崎厚生労働大臣の不信任案が野党から提出されたので、3時間の長丁場となりました。

今回の年金制度改革法案の柱のひとつが、賃金物価スライド方式の採用です。物価や賃金が下がった時に、それに合わせて、年金の支給水準を調整する、というものです。仮に、物価や賃金が下がっても、年金支給額だけが維持されれば、保険料等の年金収入は減る(働く世代の人口減により更に減る)一方で、支出は減りません(むしろ高齢者人口の増加によって増える)ので、年金財政が益々悪化してしまいます。そのような場合に、働く世代(将来年金給付を受ける世代)と現に年金給付を受けている世代で痛みを分かち合うのが本制度の趣旨です。

「仮に」と申し上げたのは、本制度が適用されるのは平成33年度からですので、その時までに賃金や物価が下落するデフレ状態を解消できれば、年金の支給額が減ることはありませんし、政府もそのような状況を実現すべく全力を尽くさなければなりません。

年金制度の議論は政治家にとっては鬼門です。なぜなら、少子高齢化により自然体でも年金財政は悪化する中で、年金支給と負担のバランスを取らざるを得ません。(現在、行っている)年金積立金の運用改善等を除けば、年金支給額を増やしながら現役世代の負担を軽くできる打ち出の小槌はありません。こうした政治家にとって不人気な政策議論になると、将来への責任は蔑ろにして批判合戦に終始しがちになります。野党による「将来世代3割年金カット法案」なるレッテルばりも、事実と異なる指摘(上記のとおり適用は今から5年後であり、仮に適用された場合、将来世代の給付は増加します)であり、また、現行のマクロスライド方式(同方式により所得代替率を現在よりも逓減させながらも50%は維持していくとされています)と混同した指摘であります。

年金制度は政権交代が起きても制度の根幹が変わらない安定したものであるべきだし、ましてや政局の駆け引き材料にしてはならない。自戒を込めて、こう申し上げたいと思います。

なお、今回の法改正には、産休育休を取っても年金制度の上で不利にならない措置や短時間労働者も厚生年金に加入できるよう対象者を拡大する措置なども含まれていることも申し添えます。

(写真は、本日、国会見学に来てくれた多摩市立東落合小学校と町田市立小山田小学校の6年生です。)