201212月の安倍政権発足以来、日経平均株価は201211月の安値8,661円から15,424円(2014829日時点)に上昇し、日本の株式市場の時価総額は約200兆円増加したと言われています。株価の上昇は一部の投資家や企業だけでなく、個人消費の増加、年金基金資産額の増加、企業のバランスシートの改善などを通じて、日本経済全体に好影響を及ぼしています。バブル崩壊以降、デフレ経済下で失われた日本の富を一部取り戻したと言えるかもしれません。

 


 

 

実は、失われた日本の富は株価だけではありません。「日米の住宅投資額累計と住宅資産額の推移」(図1)をご覧ください。



 アメリカでは、住宅投資累計額が増えるにつれて住宅資産額も徐々に増え、投資に見合ったストックが形成されていることがわかります。近年では、資産額が投資累計額を上回っています。一方、日本では住宅投資累計額が増えても、住宅資産額はあまり増えていません。1990年代以降はほとんど横ばいです。直近の数値では、住宅投資額の累計が800兆円台後半なのに対して、住宅資産額は300兆円半ば。投資額のうち500兆円以上が消えてしまい、資産額が投資額の3分の1程度しか残っていないのです。

 

 

日本では建物が古くなると取り壊して建て替える「スクラップ&ビルド」の慣習が長い間続いてきました。木造戸建て住宅の評価も約20年で一律に価値がゼロになってしまいます。アメリカでは、住宅購入後に建物の補修やバリューアップのリフォームをして、売却する際に資産価値が落ちないように、あるいは高めるように努力するのが一般的です。中古流通市場においても、そうした手入れの状況も含めた建物の価値が認められ、価格に反映しています。

 

 

 

私が副委員長として参加している自民党中古住宅市場活性化小委員会では、中古住宅市場の活性化に向けて、質の高い中古住宅の流通を促進する環境整備と住宅のストックの質の向上のために講ずべき措置について中間とりまとめを行いました。具体的には、専門性の高い事業者が良質なリフォームを行って消費者に提供する買取再販事業に対して不動産取得税の特例措置を創設することや、不動産に係る情報ストックの整備や中古住宅の取得にあわせたリフォーム一体型ローンの普及によって、若年層を中心とした中古住宅購入の円滑化を盛り込んでいます。

 

 

 

少子高齢化が進行する中で、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」社会に移行することが重要です。ライフスタイルやライフステージに応じた住み替えが円滑に行えるよう、中古住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進めることで、国民全体の豊かな住生活の実現を目指していきます。