エネルギー政策議員連盟で高速増殖炉もんじゅの視察に行って参りました。朝6時の始発の新幹線で名古屋に向かい、ひかりに乗り換えて更に米原で特急しらさぎに乗り継ぎ、敦賀駅からバスに乗り敦賀湾の湾岸に建つ高速増殖炉もんじゅに到着しました。敦賀駅からの道中は、ところどころ、漁村や釣客を対象とした旅館がありましたが、右手には冬の日本海、左手には雪景色の山々といった景色が続いていました。

 

 

高速増殖炉もんじゅは、MOX燃料(プルトニウムとウランの混合物)を燃料として発電する原型炉です。使用済み核燃料を再処理して出来たプルトニウムを原料とするため、核燃料を再利用する国家プロジェクトである核燃料サイクルの中核施設でもあります。高速炉を実用化するためには、実験炉⇒原型炉⇒実証炉というステップを踏まなければなりません。もんじゅは実験炉である常陽の後を受けて、1983年に建設が始まりましたが、1995年にナトリウム漏れ事故を起こしたこともあり、事故から20年近く経過した今も本格稼働に至っておりません。

 

 

当日は、齋藤伸三所長からもんじゅの概要を説明していただき、もんじゅの建物内を案内していただいた後、もんじゅの役員との意見交換を行いました。高速炉計画については、ロシア、中国、インド、韓国が高速炉を実用化する構想を持っています。とくに、ロシアは今も原型炉を稼働中です。一方で、先行して進めていたイギリス、ドイツ、アメリカは既に実用化を断念しています。原型炉および実証炉を稼働させた実績のあるフランスにも、稼働中の炉はありません。

 

 

 この高速炉は安全かつ低コストに運転させることができれば、素晴らしい計画です。発電のための燃料輸入も必要なくなりますし、既にある使用済み核燃料の処理も大幅に効率化します。しかし、この「安全」かつ「低コスト」をクリアするのは至難の業です。今も原型炉を稼働中のロシアでは、(何十回も)もナトリウム漏れ事故を発生しているそうですが、すぐに該当箇所を修理して再稼働させるそうです。意見交換でも「故障の起きない炉は無い」との発言もありました。福島第一原発の事故があり、原発事故に対する懸念の大きいわが国で、この先起きる事故を乗り越えて実用化できるのでしょうか。

 

 

 2番目の課題は低コスト化です。原型炉もんじゅの建設に6,000億円投入されてきましたが、単純にKW当たりの単価で比較すると軽水炉の約6倍程度の建設コストがかかると見込まれていたとのことです。ランニングコストだけでも、6円/kwhの買い取り価格に対して、1224/kwhかかるそうです。高速炉が無事に実証化できたとしても、安全性を確保しつつも十分に元の取れるコストになる日が近い将来に訪れるとは思えません。

 

 

 こうした問題意識から、意見交換の場で最後に、「『中国、インド、フランスやロシアは(20252040年)に商業化する構想をもっている』と書いてあるが、専門家からみて、果たして実現可能なのか、日本はどうなのか、率直に教えてほしい」と尋ねたところ、この計画は有用性と経済性の観点から。。。フランスからデータを取り入れて。。。以上から有用性があることは間違いないわけで。。。」とはぐらかされてしまいました。

 

 

 ここで、残念ながら、時間切れとなってしまいました。案内をされた原子炉格納容器の建屋内の時計が5分遅れていたこと(小さい事ですが一事が万事です)等も含めて、この見学で、核燃料サイクルは見直しが必要という私の問題意識が覆ることはありませんでした。

 

 

 いずれにせよ、ご多忙の中、丁寧に案内・説明をしていただいた職員の皆様に感謝を申し上げるとともに、職員の皆様の科学技術振興にかける熱い思いに敬意を表したいと思います。