臨時国会が閉会しました。最後の1週間は、議員会館で仕事をしていると、朝晩関係なく「特定秘密保護法案反対」というデモ隊のシュプレヒコールが響いていました。「成長戦略実行国会」と位置付けて始まった今回の臨時国会が、少なくとも新聞やテレビの報道を見る限り、「特定秘密保護法」一色になってしまったのは否めません。

 


 

 北朝鮮のミサイル発射実験や中国の防空識別圏など、周辺国との緊張は日に日に増すばかりです。また、今年の初めに起きたアルジェリアの事件のように、日本国内だけでなく在外邦人がテロに巻き込まれる危険性も現存しています。こうした中、テロや諸外国の軍事活動を未然に防止し日本国民の命や安全を守るために、特定秘密保護法を整備し、情報漏えいの防止に万全を期さなければならないのは多くの人が指摘しているところです。同法の必要に関しては与党のみならず多くの野党(民主党、維新の会、みんなの党)も認めています。

 


 

 マスコミは特定秘密保護法に反対の嵐ですが、その嵐でいつも取り残されるのは過去の失敗への反省です。ミッドウェー海戦で日本は大敗を喫し、主要艦船とともに多くの熟練パイロットを失いましたが、敗戦の理由のひとつに日本側の暗号が殆どアメリカ側に解読されていたことも挙げられています。国の情報公開や国民の知る権利の大切さは強調されても、国益を守るうえでの情報戦の重要性はあまり問われていないように感じます。日本はスパイ天国であると指摘する声もありますが、レフチェンコ事件(※)で明らかになったように、現在も、他国がマスコミ等にスパイを送り込んで日本の国家機密を盗み出している可能性を完全には否定できません。残念ながら、日本を取り巻く世界は憲法が謳い上げる「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼する」状況にあるとは言い切れないのです。

 


 

 そもそも、秘密情報保護法は悪法でしょうか。これは、新しく秘密を増やす法律ではなく、既に特別管理秘密とされているものを更に絞り、情報セキュリティを厳しくするものです。量刑の10年以下の懲役も、アメリカの死罪、日本の不正競争防止法の(民間の企業秘密に対する)10年以下の懲役等と比べて歪なものではありません。

 


 

 ましてや、一般市民が普通に生活している中で特定機密に触れることはまず無いでしょう。特定秘密を扱う人は適正評価を受けます。この適正評価は対象者の同意が必要ですので、特定秘密を扱う人はその覚悟がある人に限定されます。よく言われる「たまたま持ち帰った特定秘密を家族が知って警察に捕まる」という状況は起こりえません。民間企業でも職場の機密書類を勝手に家に持ち帰ることは厳しく管理されています。同意して特定秘密を扱うことになった人が果たしてそうした軽率な行動をとるでしょうか。もちろん、特定秘密を扱う公務員等以外の人は特定秘密であることを知ったうえで詐欺、暴行や教唆を用いて引き出そうとしなければ罪に問われることはありません。ここで全てを反論することは出来ませんので、時間がある方は是非、自民党が作成したQ&Ahttps://www.jimin.jp/activity/colum/122766.html )をご覧いただきたいと思います。

 


 

 一方で、今回の法案成立の過程で安倍政権・自民党の支持率が低下し、国民の多くに不安を抱かせてしまったことも真摯に受け止めなければなりません。根底には、政治・行政に対する国民の不信感があるのだと思います。日本では、主権者たる国民によって選ばれた国会議員が行政をチェックし、また議院内閣制の下で行政をコントロールしています。その意味で、政治・行政は国民そのものであるはずです統治者と被治者の自同性。しかし、日本では、行政が国民の意思に反した行動をとる可能性があると疑われています。ですから、特定秘密保護法により、国は国民をスパイやテロ勢力から守るのではなく、不都合な情報を隠して自らを守るという懸念があるのです。

 


 

 今後の国会で秘密保護に関する第三者機関の設置や公文書管理のルールについて真摯に審議を重ね、疑念を払拭していくしかありません。そして、自民党も、衆参議院選の勝利に傲慢になることなく、丁寧に国民の声を拾い、出来る限り野党の協力を得られるような国会運営をしていかなければなりません。

 


 

 臨時国会が終わった後も、自民党内で来年度の税制改正や予算編成の議論が本格化します。また、日本経済再生本部に置かれた5つのワーキンググループのうち、3つ(起業大国推進、女性力拡大、労働力強化・生産性向上グループ)の幹事に加えて頂きました。「経済再生なくして、日本再生なし」の思いを持ち続け、仕事をしていきたいと思います。

 


 


 

(※)レフチェンコ事件はソ連国家保安委員会(KGB)の少佐、スタニスラフ・レフチェンコによる日本国内での政界や財界、マスコミ関係者への工作活動が暴露された事件。レフチェンコは1982714日に米下院情報特別委員会の秘密聴聞会で工作活動を暴露し、国内外に大きな衝撃を与えた。