2007年、第一次安倍政権ではポスト京都議定書の枠組みづくりへの提案として、2050年までに温室効果ガスの排出量を2007年比で半減させるという野心的な目標を掲げました。

  政府は、福島第一原発の事故に伴う原発の稼働停止などを受けて、2020年までの温暖化目標を白紙に戻しましたが、温暖化対策が喫緊の課題であることに変わりはありません。IPCCWG1(※1)による最新の報告書では、人的行為が気温上昇に影響を与えた可能性は極めて高いと評価し、温暖化により異常気象が多発する可能性も高くなると述べています。

  こうした中、今月に開催されるCOP19(※2)に向けて、新しい温暖化ガス削減目標の策定を急ピッチで進めています。新聞報道によれば、政府は、原発を稼働させないことを前提に、2005年比で▲3.8%の削減、従来の1990年比では3%程度増加するとの目標で調整を進めているとされています。原発の再稼働や再生可能エネルギーの開発が進展するという楽観的な前提としていない点では評価できるものの、仮に原発を稼働させない影響を勘案しても、アメリカの2005年比▲17%と比べて見劣りのする、あまりに消極的な目標と言わざるを得ません。

  環境政策は京都議定書をはじめ、日本が外交力を発揮し国際社会をリードしてきた数少ない分野です。世界に先んじて推進してきた省エネ技術・製品を積極的に海外に売り出して日本経済の更なる成長を図るとともに、地球全体で二酸化炭素の排出量削減を進めていくことが重要です。環境省によると、地球温暖化対策分野での国内市場規模は、2000年の3兆7,456億円から、2011年の18兆2,105億円へと急激に増加しています。今後も更なる拡大が期待されています。

  私は引き続き環境委員会に所属し、自民党環境部会では新しく副部会長を拝命することになりました。こういう時だからこそ、もう一度、攻めの環境政策を立案し、日本がこれからも国際社会での存在感を発揮し温暖化国際交渉で世界をリードしていけるよう、政府自民党に働きかけていきたいと考えています。

  その一方で、今後は地球温暖化“防止”だけでなく、地球温暖化“適応”についても視野に入れながら、政策を進めなければなりません。温暖化による異常気象を抑制すべく、世界の気温上昇を1861~1880年の平均から2℃未満に抑える努力がなされています。先述のIPCCWG1によると、そのためには温室効果ガスの累積排出量をおおよそ800GtC(炭素換算で8,000億トン)に収めなければなりませんが、世界全体で2011年までに531GtC(炭素換算で5,310億トン)の二酸化炭素が既に排出されてしまっています。このペースで進むと30年後には一切二酸化炭素を排出できない計算となります。

  上記の予測を前提とすると、イギリス等が先行して進めているように、温暖化を受け止めながらも、我々の経済や社会生活に与える影響を最小限に抑える選択もしていかなければなりません。

  現政権では、近いうちに起こりうる災害に備えて、国土強靭化計画に着手しています。公共インフラは数十年も供用に資するものですから、気候変動に関する最新の科学的知見を活用しながら、異常気象にも耐えうる強靭な日本を作っていくべきです。

(※1)「気候変動に関する政府間パネル第1作業部会」の略。第1作業部会では自然科学的根拠に基づき気候システム及び気候変化を評価。第2作業部会では生態系、社会・経済、保険等の分野における影響や脆弱性を評価。第3作業部会では緩和適応策と各作業部会にわたる横断的事項の方法論を評価。

(※2)「第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議」の略。11月11日からポーランドで開催。