「金融商品取引業者」、聞きなれない用語ですが、これは金融商品取引法上の概念です。「第1種」金融商品取引業者とは通常の証券会社等を指します。これに対し、一般の有価証券を扱わず、みなし有価証券(映画ファンドやアイドル・ファンドなど有価証券以外の金融商品)や有価証券に関連しない市場デリバティブ取引のみ扱う業者は「第2種」金融商品取引業者に分類されており、「第1種」に比べて、株式会社でなくても良いなど登録要件が緩和をされているほか、金融庁による監督・モニタリングも緩やかなものとなっています。

MRIによる巨額の投資詐欺が、AIJ事件から1年と経たないうちに発生しました。AIJ事件の際にMRIを摘発できなかったのは何故か。それは、AIJが投資運用業であるのに対し、MRIは上記の第2種金融商品取引業者であったからです。金融庁はAIJ事件発生時の投資運用会社については再調査しましたが、1,300社弱ある第2種金融商品取引業者はノーマークでした。

これについては、金融庁がお粗末と言えるかもしれませんが、一方で金融商品取引法自体の問題も露呈しています。第2種金融商品取引業者に対する規制監督が緩いのは「みなし有価証券の流動性が低く、多くの投資家が取引するものではないから」(※)とされています。しかし、(適正価格がわかりにくい等の理由で)「流動性の低い有価証券ほど投資家への勧誘は慎重に行われるべきであり、また投資家の被害が発生しやすい」(※)ことに注意しなければなりません。多くの投資家が取引していないとはいえ、今回MRIが霧消させた投資家の虎の子の資金は1,300億円にも上ります。金融商品取引法上、第2種金融商品取引業者に対する規制が十分ではなかったから発生した事件とも言えます。

他方、いたずらに規制を強化すればよいかといえばそうではありません。参入障壁の低い第2種業者だからこそ有望な金融業者が現れる面も否定できません。例えば、マイクロ投資で最近名をはせているミュージックセキュリティーズも第2種業者です。「角を矯めて牛を殺す」ことの無いよう、経済活性化のための金融機能を活かしつつ、いかに投資家保護を強化しうるか。経済活性化のために如何に金融機能を強化させられるか。金融教育の充実や金融庁の監視機能の強化を推し進めるとともに、塩梅の良い金融規制を構築する必要に迫られています。

※『金融商品取引法入門<第5版>』(黒沼悦郎)より引用