参議院の川口順子環境委員長が議院の許可を得られないまま中国出張の日程を延期し、予定されていた環境委が中止になりました。このことについて、野党が「委員長の職務を放棄した」などと主張し、川口委員長の解任決議案を提出、本日の参議院本会議で可決される事態となりました。
新人議員は「委員会・本会議に優先する行事は無い、何はさておいても出席しなさい」と教えられます。委員長の重責を担う議員はより一層委員会活動を尊重しなければならないでしょう。この件について、5月2日に、川口議員から「中国渡航に関する経緯」と題する文書(以下、文書)が配られていますが、川口議員は「関係各位に多大な迷惑をかけた」と陳謝しています。

しかし、川口議員が議院の許可を得ないまま渡航を延期した行為と野党が反対したために議院が渡航延期の許可を出さなかったことの適否は別に考えねばならないと思います。文書は、渡航延期の理由について、①楊潔チ国務委員が外交部長から昇格して初めて、日本人が面談できる機会だったこと、②帰国すれば、尖閣諸島をテーマとする国際会議に日本人が一人もいない状況になってしまうこと、をあげています。

外交はタイミングです。また、誰が日本を代表して外交を担うかも同様に重要です。外務大臣経験者で国際経験豊かな川口議員だからこそ、上記①②の職責を果たせたとも言えます。川口議員以外の誰かが楊委員と会合を持ちえたか定かでありませんし、会えたとしても「通訳なしの英語の会談」が出来たかも分かりません。また、上記国際会議で尖閣諸島につき中国側の偏った議論が横行した場合後になって、それを挽回するのも容易ではありません。

以上のように、川口議員の渡航延期願いは相当に理由があるものなのです。それに対し、渡航延期を認めなかった理由は何でしょうか。決議文を見ても、「議会を軽視した」等の主張しか見当たりません。予定されていた委員会は5分間の法案趣旨説明(いわゆる「経読み」)だったようですが、委員会が当日開かれず他日に開催されることによって、如何に国益を害し、それが如何に挽回不能なものであるか、また、予定通り開催し筆頭理事が委員長を代行することでは足りなかったのか、これらにつき反対した野党は具体的に説明する必要があるのではないでしょうか。

先日、維新の会は予算委員会の場で「閣僚が議会活動に拘束されることにより積極的に外交を展開できず、国益を損ねている」と主張していました。議員外交も同様です。民意を受けた国会議員が十分に審議を重ねることは国益に資する行為ですが、同じように議員が積極的に海外を飛び回るのも国益につながる行為です。外交を政局の駆け引き材料にせず、限られた時間の中で国益を最大化できるよう柔軟にルールを決めていくことも必要なのではないでしょうか。