皆さん、こんにちは。自民党衆議院東京都第23選挙区(町田市、多摩市)支部長の小倉まさのぶです。

 

社会保障制度改革推進法案が8月10日に参議院で可決されました。前回ブログ(「税と社会保障の一体改革について」)で述べたように、同法案は、2014年4月に自動的に消費税を8%に上げる訳ではありません。まずは、大がかりな景気対策を実施し、景気回復・デフレ脱却を図ることが先決となっています(附則18条2項(※1))。
 

日本経済を蝕むデフレ不況の原因は需要不足です。こうした場合、ケインズの経済学に則れば、金融緩和と財政出動により、需要不足を解消する処方箋となります。具体的には、2~3%のインフレターゲット(物価目標政策)や日銀法改正による金融緩和、そして地震対策や省エネ・再生可能エネルギー促進などターゲットを絞った財政出動が有効な経済対策になるでしょう。この間、円高を是正するような為替政策(例えば、単独介入や日銀の外債オペ等)も必要でしょう。ただし、際限なく金融緩和や財政出動を続ければ、日本国債の暴落⇒金利の急上昇という最悪の事態も招きかねません。国債の利回りが1%上昇するだけで利払い費は年間6.6兆円(※2)増えますし、国債を大量に保有する日本の金融システムも機能不全に陥ります。

 

金融緩和と財政出動で急場を凌ぎつつ、その間、それ以外の方法で需要不足を解消しなければいけません。需要不足の真犯人はズバリ企業の貯蓄超過です。下図をみれば、高齢化が進み家計の貯蓄が減少する中、日本の企業が新規の設備投資をせずにせっせと貯蓄に励み、その分、政府が借金をして需要の穴埋めに走り、それでも埋められず、一部の貯蓄が海外に流れているのが分かると思います。企業が需要不足を埋めなければ、政府が借金を重ねてでもこれを埋めなければ、(外需が増えない限り)日本の景気は底割れしてしまうので、政府の赤字も一向に減りません。

 

小倉まさのぶのブログ

 

 

バブル崩壊後、日本はゼロ金利になり、2000年以降は金融機関の不良債権処理も進みました。ところが、内部留保も増えて、銀行から驚くほどの低金利で借りられるような状態になっても、日本の企業はお金を使おうとしません。90年代を境に、日本の生産年齢人口が減少に転じるとともに、キャッチアップ型の経済が終わり生産性の上昇も頭打ちになり、日本における資本収益率が落ち込んでしまったからです。
 

私は、企業の過剰貯蓄を解消させること、すなわち日本の資本収益率を改善させることが日本のデフレ脱却&景気回復&財政健全化の最終的な処方箋になると思います。その具体的な方策として、同じく企業の過剰貯蓄を指摘している深尾京司一橋大教授は、出遅れているICT(情報通信)投資や無形資産投資の促進、法人税減税や自由貿易の拡大による日本企業の国内回帰、雇用効果の大きい中小新興企業への援助を挙げています。

 

どの政党・政治家も、異口同音に、景気回復・経済成長を政策として掲げています。経済成長に対して異議を唱える有権者は誰もいないでしょう。しかし、いずれも、総花的で表面的なものばかりです。景気低迷の背景・原因は何か、経済指標を省察し経済理論を理解したうえで、これを把握していなければ、頓珍漢な景気対策となってしまいます。私は、病気の患者(日本経済)に対して、西洋医薬(金融・為替・財政政策)で対症療法を行いつつ、漢方医薬(企業の過剰貯蓄の解消)により体質改善を図る。これが、日本経済再生の処方箋だと思っています。

 

 

※1 附則18条2項

この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

 

※2 ただし、これは短期金利も含めて全ての年限の国債の金利が上昇した場合の試算です。これを長期国債だけに限った場合、短期的に借り換えが必要となる長期国債は全体の2割にとどまりますが、それでも1%の金利上昇によるインパクトは年間1.3兆円に昇ることになります。


 

参考文献:

深尾京司(2012)「『失われた20年』と日本経済」日本経済新聞出版社

 

五十嵐敬喜(2011)「経済金融トレンドに強くなる」株式会社きんざい