2年に1度の診療報酬改定を基にした、2012年度の医療サービスの公定価格が固まりました。

 

難易度の高い手術の報酬を手厚くした点は、こうした医療を提供する医師や医療機関にとって大きな励みになりますし、在宅診療の報酬を手厚くした点は、患者に自宅で家族に見守られながら治療に励むという新たな選択肢を与えることになります。こうした取り組みは、医療の機能分化にもつながります。また、土日入院を減算した点も、地味ではありますが、金曜入院・月曜退院という患者の都合を無視した入院計画を減らすには効果があります。

 

今回の改定はおおむね時代の流れに沿ったものだと思います。さらに、今後の改定において、医療の機能分化、患者の選択肢拡大、診療科・業種間の不均衡是正、モノ(医薬品・医療機器)からヒトへの重点評価を進めるべきでしょう。

 

「医療の価格を公定するのは経済学的に見て非効率であり、自由診療を拡大すべき」という人もいます。しかし、医療サービスは医療提供者と患者の情報の非対称性があり(医療サービスの質を患者は正確に判断できない)、医療格差は社会的公平性を大きく損なうので、市場メカニズムに任せるのは適当ではありません。公定価格は状況の変化への認識の遅れや、政治的プロセスを経ることによる歪みは生じますが、医療の提供者と患者のニーズにマッチするよう地道に着実に診療報酬を改定していく他に道は無いと思います。

 

そうした中で、最終決定権を有する政治家は、単に診療報酬の増額・減額をみるだけでなく、改定が患者や医療を提供する側に立って行われているかをきちんとチェックすべきですし、それが出来るよう常に勉強を重ねなければなりません。医療行政にも他の分野と同様、現場に精通した政治家が求められています。

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