場所は自分の生まれた地、愛知県蒲郡市。蒲郡オレンジトライアスロン。
職場の先輩の影響を受け、たまたまその時期にエントリーできる大会が蒲トラだったのは大きい。
が、実はそのころ実家にいい話がなく、家族にとって自分がトライアスロンを完走することで少しでも刺激になってくれたらと考えていた。
ウェットスーツを購入し、ロードバイクを購入し、出場の準備を整えていった。
練習は、そこそこ。
ランはそれまでトレイルランに出ていたのであまりせず、バイクも高校生のころ得意だったので前日練習した位、スイムは平泳ぎしかできないが、ひたすらティップネスで練習した。
準備は整った。あとは出場するだけだ。
出場にあたり、家族にはとてもお世話になった。
車での送り迎え、食事、そして応援。全てが力になったし、とても有難かった。
さて、レースの話。
結論を言うと、この大会は自分に大きなトラウマを残すことになった。
その原因は、スイム。ほとんど溺れながら泳いでいた。
ウェットスーツがここまで浮くものだとは思っていなかった。
同時に水圧+ウェットスーツがここまで体を締め付けるものだとは思っていなかった。
脚がつかず、また底が見えない塩水がここまで恐ろしいとは思っていなかった。
海に飛び込んだ瞬間、呼吸が苦しくなった。
そしてスタート後、一気に取り残され、得意な平泳ぎすらもできなくなった。
ふし浮きしても、呼吸は戻らない。
顔をつけると怖い。
ゴールまで、1,500m。
制限時間に間に合わないかもしれない。
家族が来ている。
スイムで終わる姿は見せたくない。
脚も、攣る寸前まで傷んでいる。
兎に角、もがいた。
顔を水面上に出して、前に進もうと手足を動かした。
ただ、波のせいもあり一向に前に進まない。
経過する時間。迫る制限時刻。
つらい。
ちらちらとこちらの様子を伺うライフセーバー。
なんとしても進まなくては。必ず、クリアできる。こんな壁、いつだって乗り越えてきたではないか。
最初の折り返し(500m地点)で突然にふっと、恐怖感がなくなった。
それからは、何も考えずひたすら平泳ぎをつづけた(当然、顔を水に入れる普通の平泳ぎだ)。
無心に全身を動かし、そして、最後の折り返し。
泣きそうになりながらも、そこはぐっとこらえて最後の力を振り絞る。
一人抜く、二人抜く、全力で陸を目指した。
登り口に足が付いた瞬間、どっと嬉しさがこみ上げた。
ついにやってやった。苦しい壁を乗り越えた。
泣きそうになりながら、トランジションに向かう。
その間に、自分を応援する声。
父と母だ。
普段は絶対にしないガッツポーズをして、トランジションに向かう。
力が出る。
何とか、1,500mを泳ぎ切ることができた。
そこで改めて自分が大きな壁を超えたことを思い知った。
あとは、完走は固いバイクとラン。
スイムで相当時間を使っていたので前後に人は少なくなっていたが、ウェットでのクランクコーナー続きのバイク、そして大きな水たまりが随所にあるラン。
どちらも楽しかった。詳細は割愛するが、ずっと頭の中には調子良い時に流れる音楽が流れていた。
そして、最後のストレート。
父も母も、目の前を通るたびに応援してくれたが、これが今大会最後。
渾身の力を振り絞ってゴールに飛び込む。
結果は、3時間10分ごえ。
正直めちゃくちゃ遅いが、でも完走できた。
まずはそれで、十分だった。
父も母も、これ以上はないくらいほめてくれた。
この年になっても、褒められるのは嬉しいことだ。
少しくらいは、刺激になることができただろうか。
来年の蒲郡オレンジトライアスロンでも、家族があっと驚くような活躍をしたいと思う。
